研究課題/領域番号 |
23540243
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
筧 知之 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70231248)
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キーワード | シュレディンガー方程式 / 基本解 / 台 / 特異台 / 磁場 / 零エネルギー条件 / コンパクト対称空間 |
研究概要 |
平成24年度は、零エネルギー条件を満たす磁場付きシュレディンガー方程式の基本解をある種のコンパクト対称空間上で構成し、詳しい性質を調べた。特に基本解の台および特異台の構造を研究した。得られた結果は以下の通りである。 (1)コンパクト対称空間MがGasqui-Goldschmidtの意味でrigidである場合、M上の零エネルギー条件を満たす磁場付きシュレディンガー方程式の基本解の台は、自由粒子に対応する基本解の台と一致する。特に、Mが奇数次元実射影空間の場合、基本解の台は、有理数時間ではある低次元集合となり、無理数時間ではM全体と一致する。 (2)コンパクト対称空間Mがn次元球面の場合、Gasqui-Goldschmidtの意味でrigidではない。従って上記(1)のような結果は成立しない。しかしこの場合でも、零エネルギー条件を満たす磁場付きシュレディンガー方程式の基本解の特異台は、自由粒子に対応する基本解の特異台と一致することが示され、特に、有理数時間では特異台が低次元集合となり、無理数時間では特異台がM全体となることが判った。上記の結果は、零エネルギー条件を満たす磁場の中での粒子の振る舞いが、自由粒子の振る舞いに近いということを主張している。尚、これらの結果をまとめた論文「Magnetic Schroedinger equation on compact symmetric spaces and the geodesic Radon transforms of one forms」が、Contemporary Mathematics から出版予定となっている。 多様体上の磁場付きシュレディンガー方程式の基本解の詳細な性質については、ほとんど何も判っていない。本研究によって、ある種の対称空間上の場合には、基本解の構造が詳しく解明された、という点で意義があると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にあった磁場付きシュレディンガー方程式の基本解の構造解明について、十分な成果が得られたため
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今後の研究の推進方策 |
偶数重複度条件を満たさない一般のコンパクト対称空間上の磁場を持つシュレディンガー方程式の基本解について、基本解の構成方法を研究し、また、特異台の代数的な構造、および、幾何学的な構造を明らかにする。また、派生する問題として、一般のコンパクト対称空間上でシュレディンガー型方程式に対するL2適切性の問題を超局所解析および幾何解析の双方の視点から考察したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果を各研究集会、および、セミナー等で発表する。そのための旅費に使用する。更に、海外での国際研究集会で研究成果を発表することも考えており、そのための外国出張旅費として使用する。 また、論文作成、および、研究文献や研究データの整理や研究への活用、等を目的として、コンピューター、および、周辺機器を購入する。勿論、研究文献の購入にも研究費を使用する。 そして、海外も含めて、本研究に関係すると思われる研究者を招聘し、研究に関する意見交換を行う。そのための謝金および招聘の旅費として使用する。また、本研究の総まとめとして、研究集会の開催も検討している。
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