研究課題/領域番号 |
23540247
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
木村 弘信 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (40161575)
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キーワード | q-超幾何関数 / 量子パンルベ系 |
研究概要 |
(1) 量子パンルベ系の特殊解に付随するコホモロジー群の決定は,進展がなかった.量子パンルベ系はパンルベ系のハミルトニアンを正準量子化して得られるシュレディンガー方程式であるが,その系の位置変数に関する多項式解が存在し,この多項式解が,具体的にガウスの超幾何積分やその合流型超幾何積分の被積分関数を種とする多重積分で表わされることが知られている.これらの積分表示から,量子パンルベ系を逆に再構成できるか?,上記の(2,4)-グラスマン多様体上の超幾何関数であるガウスの超幾何や合流型超幾何を(2,n)- グラスマン多様体上の超幾何で置き換えて,それを種とする多重積分から量子ガルニエ系を決定することができるか?という問題を考察する予定であったが,そのためのステップである多項式解の積分表示に付随したコホモロジーを決定するという問題についてはほとんど新しい結果は得られなかった. (2) q-超幾何関数の量子群からの研究. 古典的なガウスの超幾何方程式のq-類似であるハイネのq-超幾何方程式やガウスの超幾何関数の合流型方程式のq-類似については,大山陽介氏の結果がありq-差分方程式の分類がある.その解についてジャクソン積分による積分表示を与えたが,これらを量子群の視点から理解するべく研究した.古典的な場合に(2,4)- グラスマン多様体上の超幾何方程式として理解され,積分表示はGL(4)の極大可換部分群の指標のラドン変換として与えられる.この描像をq-超幾何の場合にも適用するために,量子グラスマン多様体の点によって決まる非可換な積分変数の一次式のべき関数の積分を定義し,それが,これまで青本等が研究していたq-超幾何積分を本質的に与えることが分かった.これは(2,n)- グラスマン多様体上の超幾何関数のq-類似に当たる.しかし,まだ合流型超幾何関数の同様の理解は得られていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の達成は遅れている.今年度において量子パンルベ系の特殊解の研究の中で,量子パンルベ方程式の特殊解として現れる超幾何タイプの積分に付随する代数的コホモロジー群の具体的な決定を行う予定であったが,ほとんど進展させることができなかった.同時に行っていたq-超幾何関数の研究に主な関心があってそれに時間を取られたこともあって,本来のコホモロジー群の決定に多くの時間を使うことができなかった.引き続きこの問題を研究する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画において,実現できなかった量子パンルベ系の多項式解の積分表示に付随した代数的コホモロジー群の決定を行い,さらに(2,n)-グラスマン多様体上の超幾何で置き換えて,それを種とする多重積分に対するコホモロジー群の決定を行う.そのうえで,名古屋氏との共同研究によって,量子ガルニエ系のハミルトニアンを決定することを実行したい.また,古典的な合流型q-超幾何関数を量子群の視点から理解し,量子(2,n)-グラスマン多様体上のq-超幾何関数の理論を構築することを推進したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の「今後の研究の推進方策」において述べたように,研究の推進は,研究者自身による計算実験,計算機による計算実験,共同研究者との議論によるアイデアの醸成がメインになる.したがって共同研究を推進するための旅費が主な研究費の使途である.また関連する分野の情報を収集したり,研究者を招聘して討論する機会を設けるなどの費用が必要である.これにほぼ70パーセント以上の研究費を使用する予定である.それに加えて研究の進行に伴って必要になる資料,書籍等の購入費用,情報機器の更新あるいは新規購入費用などに研究費を使用する予定である.
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