研究課題/領域番号 |
23540248
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
壁谷 喜継 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70252757)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 熱方程式 / 楕円型偏微分方程式 / シュレディンガー半群 / ホットスポット / 構造定理 |
研究概要 |
本年度は,計画開始年度であったが,楕円型方程式の正値解の遠方での挙動の違いでポテンシャル付きの熱方程式の解の最大値の形状がどのように反映されるかを東北大学石毛和弘教授との共同研究を通じて解明することができた.この研究成果に付随して,シュレディンガー半群の立場から,解の Lp-Lq 評価も可能となり,未解決であった解の精密な減衰オーダーを確定させることができた.これらの成果は,国際学術雑誌 Journal of Functional Analysis の 212号(2012年3月発行)に石毛教授との共同研究として掲載された.また,関連する楕円型偏微分方程式の研究として,スイス・バーゼル大学の Catherine Bandle 教授との共同研究で双曲空間上の非線形楕円型方程式を考察した.双曲空間の曲率がどのように解構造に影響するかを見極める必要があったのだが,特殊な変数変換をすることで曲率ゼロのユークリッド空間上での非線形楕円型偏微分方程式に帰着させることができ,その理論を用いて速く減衰する解の一意性,遅く減衰する解の連続濃度での存在などを解明することが出来た.これらは,先行研究をすべて取り込んで包括的に双曲空間での楕円型偏微分方程式の解を扱う処方箋を与えた結果である.これらの成果は,国際学術雑誌 Advances in Nonlinear Analysis の 1 号 (2012年2月発行)に,Bandle 教授との共同研究として掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間の計画の1年目で,負値のポテンシャル項付きの熱方程式の最大値の挙動が,楕円型方程式の解の遠方での減衰にどのように依存するかが解明でき,しかも,開始年度中に投稿した論文が,予想よりかなり早く国際的に著名な Journal of Functional Analysis に掲載された.当初,今年度は投稿に至ればよいと考えていたが,投稿でき掲載までたどり着けたのであり,しかも,双曲空間での楕円型方程式の研究に関しても,今年度中に掲載に至った.以上から,おおむね順調に推移しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,楕円型方程式の解の性質が,どのようにポテンシャル項付きの熱方程式の解に反映されるかを見るために,双曲空間上での熱方程式について考察する.そのために,連携研究者の石毛和弘東北大学教授を訪問したり,招聘するなどして,意見交換を行いながら研究を進める.また,東京工業大学の柳田教授,明治大学の二宮教授,愛媛大学の内藤教授らを訪問,もしくは招聘し,研究内容に関する討論を行う.楕円型方程式の部分に関しては,バーゼル大学の Bandle 教授,台湾・中央大学の陳建隆教授との連携を深めて研究を進める.これらの実行のために,まずは,偏微分方程式に関係する最新の書物を50冊選び購入して,最新の知識を得,新たな知見を生み出す.なお,次年度使用額の発生は,年度末の宮崎大学川野名誉教授から楕円型方程式の解に関するレビューを受けるための出張が中止となったため発生したものであるが,年度末のため,平成23年度中に再訪問が出来なかったために発生してものである.このレビューは平成24年度中に受ける予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
連携研究者の石毛教授を訪問,あるいは招聘するなどの国内旅費に30万円,海外の研究者の招聘もしくは訪問のための経費として20万円を計上する.また,物品費として欧文書籍購入経費として,40万円を計上する.
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