研究概要 |
主に,2step compact nilmanifold上のsub-Laplacianのspectral zeta関数の研究を行なった. この場合のspectral zeta関数は唯一つの単純極を持つ有理型関数に解析接続され,その留数を体積で割った値はcocompactな離散部分群によらず一定の値をとること, 極の位置を表す公式, 負の整数はいつも零点になることを証明した. 特別な場合について(6次元自由巾零リー群), sub-Laplacianを,その巾零多様体が, torusを構造群とするある主束の全空間となる構造を利用し, 底空間上の各指標に付随する直線束に作用する楕円型作用素の可算族へ分解される様子を具体的に記述した. これは各楕円型作用素の spectral zeta関数は極が可算個あっても可算和を考えればすべて打ち消し合い,新たな極が一つ出来る現象であり, zeta正則化行列式が準楕円型に対しても定義出来, 個々のzeta正則化行列式の可算積に対する正則化と考えられる現象であり, 今後更に一般化を研究する予定である. 高次のCarnot群から導かれるGrushin作用素の作用関数を構成する問題にも取り組み, 部分Fourier変換をすることにより, 高次振動子の作用関数を構成した. これはある非線型常微分方程式に対する境界値問題の解がいつも唯ひとつであり, 初期値問題との対応が〝微分同型" になることを示し, 高次振動子のHamilton-Jacobi方程式の解を構成することにより得られた. 更に今後はこの結果に基づき高次Grushin作用素の熱核を構成することを目標とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね予定していた結果を得ることが出来た. 又招聘予定であったアメリカGergetown大学のDer-Chen Chang教授とは台湾及びドイツで本年度2回出会うことが出来,共同討議を持つことが出来た.8月から10月にかけて,ドイツゲッチンゲンで共同研究者のBauer氏及び兵庫県立大学の岩崎氏とも共同研究を行うことが出来,当初の予定をほぼ達成出来た.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は球面の内, non-holonomic subbundleが自明なものを持つものは3,7,15次元に限るであろうことの証明を完成する予定である. 更にその場合のそれぞれに対して, sub-Laplacianのspectrumを決定する予定である. 球面に関することと同時に, 本年度以降, 構造群がtorusの主束で接続が自明でnon-holonomicなものを持つ場合について,そのsub-Laplacianと底空間上の楕円型作用素の可算族の関係について理論枠組みを明確にし, 例えば SL(2,R)上のsub-Laplacianと保型関数の関係をSL(2,R)上のsub-Laplacianの熱核の積分表示を通じて統一的に明らかにする. 通常数学研究に於いては, 研究の進展に応じて新たな知見, 興味ある問題や方向性が分かる場合が多々あるので, 多少の計画変更や優先順位の変更はありうるが3年間で概ね達成できるもの考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
古谷が6月末にヘルシンキでの研究集会に参加講演を行う(43万円). 秋にNorway Bergen大学の教授の Irina Markina氏を約50日招聘し共同研究を行う(11月~12月,90万円). 2013年3月に古谷がドイツポツダムでの研究集会をBauer氏等と共同主催講演を行う(44万円). 残り約20万円はその他研究遂行上必要な文房具, 消耗品, 論文印刷費等に使用する.
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