非線形の拡散現象を記述する放物型方程式に関して、その理解に重要な対象である界面と進行波のダイナミクスについて研究を行った。非線形系の拡散現象は、物理学、化学、生物学、さらに近年は金融工学上のモデル等、多くの分野で現れる。それらの中には、急激な状態変化が狭い領域に集中する界面と呼ばれる局在構造が現れて、この界面の示す振る舞いを理解することが非線形現象を解明する上での鍵になることが数多くある。単独、あるいは連立の非線形拡散方程式で記述される拡散現象では、界面の動力学を支配する方程式が、形式的な漸近展開によって、空間内の曲面の発展方程式として導かれている。これらの方程式は、微分幾何学的には広い意味で平均曲率流方程式と呼ばれるものとなる。拡散現象が単独の2階放物型方程式で記述されている場合には、導出の数学的正当化がすでに多くの研究者の努力の結果、ほぼ満足のいく形で成功している。23年度、24年度は非線形拡散方程式系の研究の基礎をなす線形の熱方程式についての研究を行って、KPP‐フィッシャー方程式やある臨界指数以上の指数をもつ藤田型の半線形熱方程式で報告されているような不規則長時間挙動が、1次元の線形熱方程式についてはスケーリングされた変数で解を観察することにより、その詳細が明らかになるということを示したが、本年度は線形方程式で明らかになった長時間挙動と同様な結果が非線形方程式で成立する条件について検討を行った。その結果、極一部の非線形方程式については同様の長時間挙動を示すことが期待できることがほぼ確実であるとの観察を得ることができた。
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