研究課題/領域番号 |
23540255
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
大宮 眞弓 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50035698)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ディラック型作用素 / ダルブー変換 / ミウラ変換 / 準可換微分作用素 / 定常KdV階層 / 定常mKdV階層 / 漸化作用素 / 跡公式 |
研究概要 |
研究課題の初年度にあたる本年度は、多成分作用素の準可換微分作用素の基本的性質を明らかにできた。即ち、従来知られていた1次元シュレディンガー作用素に対する準可換微分作用素を用いて得られたKdV多項式の系列と、多成分作用素としてのディラック型作用素の準可換微分作用素を用いて得られる微分多項式であるmKdV(+)多項式の系列の間の密接な、予想を超えた極めて簡明な等式群が得られた。それを用いて、mKdV(+)多項式に関する漸化作用素も構築することができた。これらの結果は、KdVソリトン理論の出発点となったミウラ変換の新たな解釈を可能にし、ソリトン理論の基本的ツールであるダルブー変換の本質をも明らかにする糸口を与えた。 準可換作用素が構築され、対応する漸化作用素が得られると、問題としている作用素の代数的スペクトル理論が構築され、同時並行的に跡公式群も証明でき。しかし現時点で得られている漸化作用素は、シュレディンガー作用素の場合と異なり、その方向での定式化が難しい形をしている。そこで、現在は、望ましい形に変形する試みを行っている。特に、現在の形ではMapleなどの数式処理で使うには、2重の不定積分が介在して使いにくいので、さまざまな工夫をしているのが実情である。 他方、KdV多項式系列とmKdV多項式系列の間に成立する、ミウラ変換を一般化した簡明な等式群は、申請者が発見したダルブー変換の基本等式を駆使することにより、様々な等式群に書き換えることができる。それらを解析することにより、従来関数解析的に困難を伴ったディラック型作用素に対する逆散乱理論に有効な代数解析的理論が構築されるものと思っている。 他方、定常KdV階層等の非線形力学系の特性の研究の過程で、古典的なSIRモデルを変形することにより、副産物として口蹄疫の伝染パターンを忠実に再現する力学系を発見した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
完全可積分系の研究において、対応する線形作用素の準可換微分作用素の構造の解明が、すべての基礎をなすことは周知である。今年度の研究は、まず多成分作用素として考えているディラック型作用素の準可換微分作用素の構造を明らかにしたことにより、そのディラック型作用素のスペクトルを明らかにする道筋が示されたといってよく、研究そのものは完全なレールに乗ったと言って過言ではなく、対応するシュレディンガー作用素の研究とパラレルに進行できる準備が整ったと言える。その意味では、当初の計画以上と言っても良いが、得られた等式群は、予想していた以上に簡明なもので、単純にディラック型作用素のスペクトル理論の改善や、mKdV階層の構築に止まらず、もとのKdV階層やシュレディンガー作用素の理論の改変までターゲットにできる目途がたった。
|
今後の研究の推進方策 |
得られた等式群と、漸化作用素を改良して代数的スペクトル理論や跡公式構築に便利なように改良して、本来の目的であるディラック型作用素の代数解析的理論の構築を行う。特に、数式処理の応用ができやすいように漸化作用素のシンプルな表現を考案する。他方、従来の関数解析的なディラック作用素の逆散乱理論を見直して、どこに本質的な困難が存在するのかを明らかにして、本研究で得られた代数的理論を適用して、それらの困難を回避する方策を模索する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
計算機が陳腐化したので、それを更新する。また得られた成果を内外の研究会や学会で発表し、参加者たちから現時点での研究の発展に関する情報を収集する。また、院生たちを動員して、数式処理を駆使して、高階定常KdV方程式や高階mKdV方程式の第一積分を漸化作用素を用いて構成する。
|