研究概要 |
核型単純C*-環の分類をK-理論を用いて分類するElliottプログラムにおいて, Jiang-Su環Zは重要な役割を果たしており, Z安定な単純核型C*-環A, すなわち, A とZのC*-テンソル積がAと同型になるクラスにおいて, Elliott不変量が完全不変量になると予想され現在研究が進められている. 実際, Z安定でない2つの核型単純C*-環で, Elliott不変量は同型ではあるが, C*-同型にならない例がToms及びRordamにより構成されている. 一方, 核型C*-環に関連する非可換次元として, 2010年にWinterとZachariasにより核型次元が導入されたが, 核型次元有限な単純C*-環がZ安定であることが2011年にWinterにより示され, 核型単純C*-環Aにおいて, (1)核型次元の有限性, (2)Z-安定性, (3)正値元から構成されるCuntz半群が強安定性を持つこと, が同値であることが予想されている. (2)ならば(3)であることはRordamにより2004年に示されている. 本年度は, 照屋氏との共同研究において, WinterとZachariasより提示された核型次元に関連する問題を拡張し, 綿谷指数有限な核型C*-環のペアP<Aが大坂ー小高ー照屋の意味でロホリン性を持つとき, Pの核型次元は,Aの核型次元以下である評価を得た. 特に, 有限群GからAへの作用が泉の意味でロホリン性を持つとき, AとGから生成される接合積の核型次元は, Aの核型次元以下と評価ができ, Winter-Zachariasの問題への部分解を与えることができた. また, Cuntz半群に関しても, 上の条件下で, Aが強安定のCunzt半群を持てば, Pも強安定のCuntz半群を持つことが示せた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の理由で研究目的の達成はやや遅れている.[1]研究目的にあげられている有限群からの作用において, トレース的ロホリン性と強外部作用の関係は, トレースの端点が有限個である場合はほぼ同値であることが解明されてきているが, 一般の場合は今のところ見通しがたっていない.[2]綿谷指数有限なC*-環のペアP < Aにおける条件付き期待値E:A->PのPopaの定義したcentral freenessの立場からの定式化はできたが, 計算がうまくできず進展はしていない.[3]一般の従順群からのロホリン性についての研究は, 上記[1], [2]に時間がとられ進展はしていない.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである.[1]綿谷指数有限なC*-環のペアP < Aにおける条件付き期待値E:A->PのPopaの定義したcentral freenessの定式化における基本性質を調べる.[2]綿谷指数有限なC*-環のペアP < Aがトレース的ロホリン性を持つとき, AのZ安定性がPに遺伝するかどうか調べる. また, Cuntz半群の強安定性についても同様に調べる. 綿谷指数有限なC*-環のペアP < Aがロホリン性を持つとき (これはトレース的ロホリン性より強いが)大坂ー照屋により両性質が遺伝することは肯定的に証明されている.[3]コンパクト群からのロホリン性を持つ作用の基本的性質を調べる.[4]計算過程において登場してきている作用素不等式について調べる. 特に, 量子系に関連する不等式について調べる.これらを遂行するために, 群馬大学の照屋氏と定期的にセミナーを開催する. また, 6月に招待講演を要請された華東師範大学(上海・中国)で開催される国際研究集会(The Special week on Operator algebras 2012)でLin氏及び参加研究者とC*-環の分類問題について意見交換を行う.[4]に関しては, 最近共同研究をしているDuy Tan 大学(ベトナム)のHoa氏を訪れ研究打ち合わせを行う. さらに,2013年1月にISI(Bangalore, インド)で開催される国際研究集会(Recent advances in Operator Theory and Operator algebras)で招待講演をすると共に主催者のBhat氏と量子理論に関して意見交換を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度は東北地方を襲った震災のための科研費の2割カット支給を想定し取り組んだため, 約30万ほど次年度使用額が発生した. これを合わせた2012年度使用計画は以下の通りである.国内旅費については, (1)立命館東京キャンパスでの打ち合わせ :6万x9回=45万(2)作用素論・作用素環論研究集会参加:10万, 国外旅費については, 国際研究集会参加・研究発表, そして研究打ち合わせとして, (1)華東師範大学(上海・中国):8万, (2) Chungbuck大学(清州, 韓国)(KOTAC国際研究集会):8万, (3)Duy Tan大学(Da Nang,ベトナム):20万, (4)Indian Statistical Inst.(Bangalore, インド):20万国外からの招へいとして20万, 謝金等として,(1)実験補助:10万, (2)研究資料の収集:10万, (3)講演謝金:10万, 物品費として数学関係図書:10万, その他として印刷費として10万少々となる予定である.
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