研究概要 |
2次元O(N)スピン系の相転移の存在不存在の問題は, は米国のクレイ研究所のミレニアム問題の一つに関連する問題で, ゲージ場の理論が数学的に矛盾なく作れるかという, 根源的な問題から派生している. しかしながら問題の提唱から40 年以上経過したにもかかわらず, その分析は難解を極め, アプローチすら見当が付かない状況である. この問題の困難さはスピン達は長い波で干渉し合うにもかかわらず, それらがどの程度に干渉するか, あるいはスピン達がどの程度に方向を変えていくのか分析する術が見つからないことである. スピンが強く方向を変える境界を「境界壁」というが, O(N) 系では方向が連続的に変わり, 壁と言うべきものも明確な定量的定義が出来ないことがあった. 私はこれを定量的に定義することにまず成功した. これによって繰りこみ変換が, 一部の計算が残っているが, 滞りなく遂行できることを見出した. すなわちスピンの揺らぎには動径方向とそれに直交する方向とがあるが, 動径方向には揺らぎが少く, 同じ方向を長く保存し続いていくが, 直交方向には非常に短い相関しかない. つまり直交方向の干渉は短く強く計算で処理でき, 動径方向の揺らぎもしくは変化は少なく殆ど固定されている. しかし系統的に減少して行く. これは直交方向には変化する割合が正確に評価され, 繰りこみ変換がうまく遂行できることを暗示していて, 実際可能である. この問題はいわゆる場の理論, 特にゲージ理論の構成問題の雛形であるが, 方法論的にはほぼこの延長上に問題はあり, この方法で分析できると期待している。またナヴィエ・ストークス方程式の乱流問題やそのほかの非線形系の協力現象の処理に転用できると信じられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これは前世紀からの難問題であって, 現代物理, 数理物理学の暗黙の仮定をなしているものである. 誠に難解であるが, 解く価値のある問題である. 現在の状況は, いくつかの難題を潜り抜けて最後の壁, すなわち繰り込み変換の繰り返し部分の処理に取り組んでいる状況である。
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