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2012 年度 実施状況報告書

分子光球の探求ー晩期型星における水分子の系統的探査

研究課題

研究課題/領域番号 23540259
研究機関東京大学

研究代表者

田辺 俊彦  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90179812)

キーワード天文 / 赤外線天文学 / 恒星大気 / 低温度星 / 恒星進化
研究概要

今年度は前年度に取得した小マゼラン雲の若い星団 NGC330 方向のデータの解析を中心に研究を行った. NGC330 及びその周辺には B型輝線星が多く存在する. B型輝線星は可視域において H α などの水素のバルマー線が輝線となっている天体であるが, これらの星では同様にパッシェン α (Pa α) が輝線となっていることが期待されたため観測を行ったものである. 前年度に独自のフィルターであるPa α, Pa α-off フィルターのキャリブレーションを確立したが, それに基づき解析を行ったところ Hα 輝線を出していて 1m望遠鏡で観測できるほとんどの B型輝線星から Pa α 輝線を検出することができた. B型輝線星からの Pa α 輝線の検出は世界で初めてである. 本研究は恒星大気中の水分子の吸収の検出が目的であるが, これら輝線の検出は, miniTAO 望遠鏡が設置された 5640 m の高地では, 通常のサイトでは地球大気の水分子の吸収のために観測できないこの近赤外の波長域が, 確かに観測できることを示した.
これまでに取得した晩期型星のデータも順次解析を行ったが, データ数が少ないため, 系統的に水分子が存在するかの結論には至っていない,
今年度もある程度多数のデータを取得する予定であったが, 望遠鏡及び施設の不具合により, 本研究が目的とする観測は 2天体にとどまった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

miniTAO 1m 望遠鏡の運用は通常, 5-6月と 10-11月の年 2回行っている. 平成24年度は, 5月運用の時点で 24年春に落雷があり, 望遠鏡及び観測装置に甚大な被害が発生したことが判明し, 5-6月期には観測することができず, 被害状況の調査にとどまった. 9月下旬より望遠鏡, 観測装置の復旧を行い, 10月には MAX38 による中間赤外線観測を行ったが, 観測装置を近赤外カメラ ANIR に切り替えて以降, 今度は山頂に設置してある発電機に不具合が発生し, ANIR による観測は予定通りには進まず, 本研究が目的とする観測は 2天体しか行うことができなかった. 本研究はその目的上, 様々な型の星を数多く系統的に観測することが必要であるため, これまでの達成度は充分ではないと考えている.

今後の研究の推進方策

平成 25年度も年40人日程度チリ・アタカマサイト山麓のサン・ペドロ市に滞在し, 可能な限りの数の星を観測し, 順次データ解析を行う. しかし今年度あまり観測できなかったため, 観測星数を増やせない場合も考慮し, 観測対象を巨星, 超巨星など恒星外層が膨らんだ進化末期の星に絞って水分子の探査を行う. これまで分子光球の存在が明らかになったのは, このような巨星に限られており, この変更により分子光球研究の重要度が現象することはない. 観測及びデータ解析と平行して, 辻のモデルを参考にしつつ光球+分子光球のモデル大気の構築し, 観測データとの比較から星の表面温度や光度階級の違いによる分子光球の違いを定量的に明らかにする.

次年度の研究費の使用計画

本研究は観測研究であるため, 研究費の大部分を観測旅費が占める. 平成25度も チリに40人日程度滞在するため観測旅費を100万程度予定している. 残りは研究発表等の国内旅費, データ解析用の PC 等に当てる予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Paschen alpha Observations of Be Stars Toward the SMC Cluster NGC 3302013

    • 著者名/発表者名
      Tanabe, T., Motohara, K., Tateuchi, K., Matsunaga, N., Ita, Y., Toshikawa, K., Konishi, M., Kato, N., Yoshii, Y.
    • 雑誌名

      Publication of the Astronomical Society of Japan

      巻: 65 ページ: 55-1 55-9

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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