研究課題
平成25年度は 11月にチリ・アタカマサイト山麓のサン・ペドロ市に滞在し、8天体の観測を行った。 当初は 6月のランにおいても観測を行う予定であったが 6月のランでは悪天候のため全く観測ができなかった。データ解析においては、これまで得られた晩期M型星の測光を行い、昨年度までに確立した解析方法によって水分子の有無の指標となる Paα等級-Ks等級、Paα-off等級-Ks等級という2つのカラーを様々なタイプ (温度) の M型星について導出した。その結果、大小マゼラン雲中の 約 70 の M星巨星においては、晩期型になるほど指標が大きくなるものが多くなるという傾向は見られるものの、M6-M8 でも指標が小さいものが見られるということが明らかとなった。当初の予想では M6 より晩期の星では全てに水分子による吸収が見られると考えられたが、このような低温の星の大気では現在のモデル光球に取り入れられていない別のパラメータが存在するのかもしれない。あるいは、マゼラン雲は金属量が少ないためこのような結果になるのかもしれない。また M型の早期の星については、1例、M1型の星に指標が有意に大きいものが見つかった。はたしてこれが辻が提唱した分子光球であるかいなかはこれからの課題であるが、本研究から得られる結論は、全ての巨星に分子光球が存在する訳ではなくその存在は特別な星に限られる、というものである。本研究の目的は、光球起源ではない水分子、すなわち分子光球を系統的に探査することであった。3年間の期間中、落雷、発電機の不具合、悪天候により 3回のランで観測ができず、特に銀河中心方向の星の観測ができなかったため、観測サンプルは金属量の少ない大小マゼラン雲の巨星に限られてしまった。そのため、金属領の多い巨星についても同様の結論が得られるかはこれからの課題である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 65 ページ: 55-1, 55-9