研究課題/領域番号 |
23540262
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野本 憲一 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (90110676)
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研究分担者 |
鈴木 知治 中部大学, 工学部, 講師 (20280935)
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キーワード | 超新星 / 宇宙化学進化 / 元素合成 / 宇宙初代星 / 大質量星 |
研究概要 |
宇宙の初期に形成された重元素を含まない種族IIIの星の進化は、宇宙の元素の起源、宇宙の再電離の源、巨大および中間質量ブラックホールの起源の問題とも密接に関連して、現在の天文学の焦点の一つである。種族IIIの星には、初代星としての種族III.1の星と、初代星に熱的力学的影響を受けて形成される種族III.2の星とがある。本研究では、これらの星が、大量のガスを降着しながら、どのように大質量星に進化していくか、どのようなタイプの超新星を引き起こし、どのような重元素を宇宙空間に放出するか、種族III.1とIII.2の星に降着率の違いにより、どのような違いが生じるかの理論的予測をたて、元素組成などの観測との比較から、初期天体の性質と進化を探求することを目的とした。 本年度は、種族III.1とIII.2の星の初期質量関数の差に最も大きな影響を受ける、10太陽質量前後の星の進化と爆発を系統的に調べた。星がO+Ne+Mg から成るコアを形成した段階で、電子捕獲型超新星を起こす星の質量範囲を精密に求め、その爆発が暗い超新星に対応することを明らかにした。この型の超新星は銀河系初期における鉄より重い元素の重要な供給源となり得ることが示されている。金属欠乏星で観測されている、ストロンチウム、ジルコニウムなどの弱rプロセス元素が、種族III.1とIII.2の星の初期質量関数の差をどう反映しているかを調べる重要な手がかりを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
種族III.1とIII.2の星の初期質量関数の差が宇宙初期の星や銀河の化学組成に顕著に現れてくるのは、重力崩壊型超新星の質量範囲の上限と下限の違いによるところが大きいと予想される。特に、質量範囲の下限に近い星の進化と元素合成、その超新星爆発は、星の数が相対的に多いだけに重要である。その点で、従来の星の進化の研究で不明確だったこと、すなわち、星がO+Ne+Mg から成るコアを形成した段階でネオンのshell flash を起こした場合に、電子捕獲型超新星を起こす質量範囲があることを新たに明らかにできたことは、重要な達成点である。
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今後の研究の推進方策 |
個々の金属欠乏星の元素組成を説明することは引き続き重要である。特に、新たに発見された「鉄が観測されない」という極端な金属欠乏星の元素組成の分析とその起源の研究を集中的に行う。鉄は本研究の結論を出す上で最も重要な元素であるので、この星で観測されている他の元素の組成比を再現する超新星爆発のモデルパラメータの決定を優先的に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、それまでに観測された金属欠乏星の元素組成のデータの分析を行ない、その結果を説明しうる超新星爆発のシミュレーションを行ない、国際会議で発表する予定であったが、新たに、鉄が観測されないという星の予備的データを入手した。鉄は本研究の結論を出す上で最も重要な元素であるので、計画を変更し、この鉄の含有量がゼロの星の元素組成の分析を優先的に行なうことにしたため、次年度使用額が生じた。 上記の鉄の含有量ゼロの星の極めて詳細な解析と、それを説明する超新星爆発のシミュレーションを行い、結果を多くの国際会議で発表する。そのためのコンピュータの購入、旅費などの経費に使用する。
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