研究課題
本研究では、太陽より重い中質量星において未だ存在が明らかになっていない「低質量惑星」と「短周期惑星」について、「中質量巨星の高頻度視線速度観測」および「中質量主系列星の超高SN比視線速度観測」という二通りの新しいアプローチによって迫る。また、同時に測光観測による掩蔽現象の検出にも挑む。これにより、中質量星における土星~木星質量の惑星および短周期惑星の存在確率を初めて明らかにし、これまでの観測と合わせて中質量星における惑星系の統計的な性質を確立、惑星形成・進化過程についての詳細な理解を得ることを目指す。平成23年度は、前者の目的のため国立天文台岡山天体物理観測所を中心に約50個の中質量巨星に対して高頻度かつ高精度の視線速度モニター観測を行った。その結果、木星質量程度以下に相当する低振幅の視線速度変動を示す天体を10個程度同定した。これらの天体は中心星質量が3太陽質量まで万遍なく分布しており、広い恒星質量範囲に渡って低質量惑星が存在する可能性を示している。また、後者の目的のためにヒアデス星団に含まれる中質量主系列星20個に対して高SN比の視線速度モニター観測を行い、惑星の検出可能性を調べた。その結果、これらの天体で十分惑星質量天体を検出することができることが分かり、今後の観測への道筋をつけることができた。また、同天体への測光観測も行ったが、現在までのところ惑星による掩蔽現象は捉えられていない。これらの一連の観測は来年度も引き続き行っていく。
2: おおむね順調に進展している
研究の中心となる岡山観測所での望遠鏡時間がきちんと確保できているため、視線速度観測についてはほぼ予定通りの観測が実施できている。測光観測については、使用する望遠鏡にやや不具合があり大規模な観測を展開するには至っていないが、最低限の観測はできた。
引き続き望遠鏡時間の確保につとめ、着実に観測を遂行していく。研究の大規模な展開を見据え、他観測所での観測時間ももう少し増やしたいと考えている。やや不具合のある測光観測用望遠鏡については早急に修理を予定している。
今年度同様、観測に赴くための旅費が中心となる。特に研究協力者(学生)を観測に派遣するための旅費に充てる予定である。今年度は予定していた観測が一回分なくなったため若干の未使用額が生じたが、これも来年度分と合わせ上記目的に使用する予定である。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Researches in Astronomy and Astrophysics
巻: Vol. 12 ページ: 84-92
10.1088/1674-4527/12/1/007