研究課題
本研究では、太陽の1.5倍から5倍程度の質量をもつ中質量星において未だ存在が明らかになっていない「低質量惑星」と「短周期惑星」について、「中質量巨星の高頻度視線速度観測」及び「中質量主系列星の超高SN比視線速度観測」という二通りの新しいアプローチによって迫ることを目指している。また、同時に測光観測による掩蔽現象の検出にも挑む。これにより、中質量星における土星~木星質量の惑星及び短周期惑星の存在確率を初めて明らかにし、これまでの観測と合わせて中質量星における惑星系の統計的な性質を確立、惑星形成・進化過程についての詳細な理解を得ることを目指す。平成24年度は、前者の目的のため、前年度に同定した低質量惑星を有する可能性のある中質量巨星10天体に対して、国立天文台岡山天体物理観測所を中心に高頻度かつ高精度の視線速度モニター観測を行った。その結果、木星質量の2倍以下の低質量惑星を2つ発見した。これらは、これまでに中質量巨星周囲で発見された最も軽い惑星であり、このような重い恒星の周りにも比較的軽い惑星が存在することを示す直接的な証拠となった。また、恒星の脈動の影響が大きい巨星周りでの惑星検出に際して高頻度観測が有効であることが示され、今後の惑星探索の新たな道筋を示すものとなった。また、後者の目的のため、前年度に引き続きヒアデス星団に含まれる中質量主系列星20個に対して視線速度モニター観測を行った。この目的のための観測時間は必ずしも潤沢ではないが、その中で、軌道運動によって生じている可能性のある視線速度変化を示す天体を数個同定した。これらの天体については来年度継続観測し、惑星の有無について詳細に調査する予定である。
2: おおむね順調に進展している
中質量巨星の観測に関しては、研究の中心となる岡山観測所での望遠鏡時間がきちんと確保できているため、ほぼ予定通りの観測が実施できている。中質量主系列星の観測に関しては、中質量巨星の観測ほどには観測時間を確保できていないが、限られた時間の中で観測対象を絞って観測を実行し、興味深い天体を複数同定することができたため、概ね順調に進展していると言える。測光観測については、前年度は使用する望遠鏡に不具合があったが、修理して無事使えるようになったので、今年度後半から問題なく観測が行える状態になっている。
引き続き望遠鏡時間の確保につとめ、着実に観測を実施していく。予定している観測が実施できれば、所期の目的は達成できると見込んでいる。特に来年度は、共同研究を推進している中国興隆観測所で多くの観測時間が確保できる見通しが立ったため、さらに集中的に観測を展開したいと考えている。岡山、中国だけでなく、ハワイやオーストラリアでの望遠鏡時間の確保にも努めていきたい。
今年度はほぼ予定通りに研究費を使用した。来年度も今年度同様、国内外の観測所に観測に赴くための旅費が中心となる。特に研究協力者(学生)の協力に負うところが大きいので、彼らを観測に派遣するための旅費に主に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
The Astrophysical Journal
巻: Vol. 762 ページ: article id. 9
10.1088/0004-637X/762/1/9
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 64 ページ: 1-14