研究課題/領域番号 |
23540265
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 佳宏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10290876)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 活動銀河核 / ブラックホール / X線 |
研究概要 |
国際宇宙ステーション搭載・全天X線監視装置(MAXI)計画を推進し、その初期成果を2011年11月に日本天文学会欧文研究報告「MAXIすざく」特集号として出版した。MAXI運用開始後7か月の間にガススリットカメラ(GSC)で取得されたデータを用いて、銀緯10度以上の全天から系統的なX線天体の探査を行い、その結果をMAXI・GSC第一版カタログとしてまとめた(Hiroi et al. 2011)。このカタログは143個の天体を含み、1天体を除く全てのX線天体を同定することに成功した。この高い完全性は、4-10 keV バンドをカバーする全天無バイアス探査としては類のないものであり、多数の吸収をうけた活動銀河核を含む。さらに、カタログされた活動銀河核サンプルのうちブレーザー天体を除く37天体を用いて、近傍宇宙における活動銀河核のX線光度関数をこれまでに最高の精度で決定した(Ueda et al. 2011)。Swift衛星によって求められた15 keV 以上での光度関数との比較から、活動銀河核の2-200 keVでの広域スペクトルの形が光度依存性を持つことを指摘した。 Swift/BATによる探査で検出されている電波銀河2天体の「すざく」による追求観測を行い、その結果を論文として発表した(Tazaki et al. 2011)。軟X線バンドで観測される散乱成分の強度を正確に測定し、電波銀河の中心核周辺に存在するガスの量が、普通のセイファート銀河よりも少ないという興味深い可能性を指摘した。 また「すばるXMMニュートンディープサーベイ」のX線天体同定作業を可視光共同研究者と協力してすすめ、その初期結果をこれまでに集めたX線探査のサンプルと合わせることで、活動銀河核の宇宙論的進化を制限した。その結果をドイツで行われた次期全天X線探査衛星eROSITAに関する国際会議にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MAXIの第一版カタログ作成は、近傍宇宙における活動銀河核の統計的性質の解明に不可欠であり、本研究完成のための非常に重要なステップである。MAXIの検出器の較正や全天画像の解析方法を確立した上で、その結果を論文として出版できた意義は大きく、期待どおりの進展があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
高赤方偏移にある埋もれた活動銀河核を探査し、前年度までに得られた近傍宇宙における探査結果と併せることで、その宇宙論的進化を解明することが本研究の最終目標である。そのために、非常に高い感度が達成されている、チャンドラ・ディープフィールドや「すばる」XMMニュートン・ディープフィールドのデータを用いて、深くガスに埋もれた活動銀河核の系統的探査を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
活動銀河核の巨大ブラックホールの宇宙論的進化の研究は、すでに初期成果が出つつあるため、この結果を国際研究集会にて発表する。また、本研究で用いるための、チャンドラ衛星およびXMMニュートン衛星による深探査で得られたサンプルを整理すると共に、日本の次期X線天文衛星ASTRO-Hによる観測戦略をたてるため、海外にて情報収集および打ち合せを行なう。
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