研究概要 |
近傍宇宙における活動銀河核(AGN)の中心核構造の性質を確立すべく、Swift衛星による硬X線サーベイによって見つかったAGNの「すざく」衛星による追求観測を進めた。これまで手つかずであった「低光度AGN」(Kawamuro et al. 2013) および「電波強度の大きい高光度AGN」(Tazaki et al. 2013)に注目した。鉄K輝線強度を正確に求め、それをモンテカルロ計算による理論計算と比較することで、トーラスの立体角に制限を与えた。その結果、AGN光度が減少するにつれてトーラス立体角は大きくなるが、さらに低光度になるとそれが減少するという事実をつきとめた。 全天X線監視装置MAXI搭載ガススリットカメラによって観測された37か月間のサーベイデータに対し、これまでに開発した解析手法を適用し、銀河系外のMAXIソースカタログ第二版を作成し、出版した(Hiroi et al. 2013)。本カタログは500天体を含んでおり、全天をカバーした4-10 keVバンドを含むX線探査としては過去最高の感度を達成している。 多波長深サーベイで検出された1型 AGNに対して、ブラックホール質量を推定し、エディントン比(ブラックホール質量で規格化した光度)とX線スペクトルの傾き(べき指数)に有意な相関があることを発見した(Brightman et al. 2013)。この結果は、X線スペクトル情報を用いることで、エディントン比の大きな「急速に成長するブラックホール」を同定できる可能性を示唆する。 研究の集大成として、これまで進めてきたMAXIや「すばる-XMMニュートンディープサーベイ」で見つかった多数のAGNサンプルを統一的に解析し、埋もれたAGNを含む全AGNの宇宙論的進化を過去最高の精度で決定した(Ueda et al. 2014, ApJ, in press)。
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