研究課題
高密度分子雲コアから原始星周囲での円盤形成までを追った輻射流体力学シミュレーション(Tsukamoto et al. 2015)に基づき、円盤形成時における星間ガスと氷の組成進化を化学反応ネットワーク計算によって調べた。星間ダスト表面での化学反応については、氷マントル全体で化学反応が起こる2相(気相と固相)モデルと氷表層でのみ化学反応の起こる3相(気相、氷表層、氷マントル内部)モデルで計算を行い、結果を比較した。3相モデルでは、氷マントル内部に一酸化炭素などがトラップされることにより、氷の組成が流体素片の現在の位置だけでなく今までに経験した最高温度に依存するという、より現実的な振る舞いを表すことができた。水、アンモニア、メタノールなど高密度分子雲コアの段階ですでに存在度が高く安定な分子は、そのまま円盤に取り込まれ、円盤内の高温部に降着すると昇華する。一方、大型有機分子や炭素鎖分子は、分子雲から取り込まれた成分に加え、形成中の円盤でも生成されて有為に増加することが分かった。大型有機分子の生成量は、氷マントル内部において光解離が起きた場合にすぐに元の分子が再生成される率と、ラジカル分子が氷マントル内部を拡散する率に大きく依存することを示した。硫黄系の分子については、重力収縮するコア中では硫化水素が多いのに対し、円盤内では硫化水素が壊され一酸化硫黄, H2CS, OCSなどが生成されることが分かった。これらの結果は学術雑誌に掲載された。また、上記の理論的研究をもとに、星・惑星系形成領域の観測との比較・議論を行った。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
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