研究課題
本研究の目的は活動銀河核 (AGN) の環境と中心核への質量降着過程を解明することである。AGNのエネルギー源は中心の巨大ブラックホールへ落ち込む物質の重力エネルギーであり、降着物質の起源や物理状態・角運動量輸送の機構を調べるため、H24年度は以下の手法で研究を行なった。・ALMA望遠鏡によるミリ波帯でのガスの運動と分布の調査:Cycle 1への観測提案は不採択だったが、観測所が科学試験観測として公開しているデータのうち電波銀河Centaurus Aの観測結果を入手し、CO (J=2-1)輝線の電波像を得た。この結果、(1)4 kpcのスケールに広がる銀河回転に沿う分子ガス円盤, (2)中心20 - 100 pcの領域で銀河回転から切り離されブラックホールに束縛された運動を示すガス, (3)両者をつなぐS字型のフィラメント構造が明らかになった。特に(3)はALMAの高ダイナミックレンジ像で初めて明らかになったものであり、銀河回転からブラックホールへ落ち込むガス流を捉えたものと考え、論文を準備している。・ALMA望遠鏡の基線長を300 kmまで拡張して、AGNの中心構造を解明するALMA拡張アレイの提案を行なった。1ミリ秒角を切るVLBI並の高分解能と、数100 Kの温度まで検出する高感度を合せ持つことで、AGNへのガス供給が鮮明に解像できるほか、恒星の検出・撮像も可能にしてAGNへの恒星流も明らかにする狙いがある。国内・国際コミュニティで科学目標の検討を行なった上で、本計画は日本学術振会議の中期計画の候補の一つに挙がっている。・高エネルギーγ線を放射する電波銀河3C 84において、電波ジェット成分の発生と同期しないγ線フレアイベントを発見した。・低高度AGNであるNGC 4258のミリ波帯スペクトルの時間変動を用いて、中心核成分と微小ジェットによる放射成分とを分離した。
2: おおむね順調に進展している
ALMAの観測申請書は不採択だったためやや遅れが生じた。しかし公開データの入手により新しい結果を得て解析を行ない、成果報告ができたので、概ね予定通りに進んでいる。
最終年度にあたり、成果をまとめて出版することに注力する。(1) Centaurus AのALMAによる観測結果の出版, (2)GBT望遠鏡で得たメーザー源AGNの観測結果の出版を進める。
必要な物品の購入は初年度で概ね済んでいるため、最終年度は主に、研究会での成果発表(旅費・会議登録料)と論文出版費に研究費を使用する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件)
The Astrophysical Journal
巻: Vol.765 ページ: 63
10.1088/0004-637X/765/1/63
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
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Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 64 ページ: Article No.118