研究課題/領域番号 |
23540270
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
松本 倫明 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (60308004)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 星形成 / 分子雲 / 磁場 / 乱流 / 適合格子細分化法 / 大規模シミュレーション |
研究概要 |
乱流と磁場を持った分子雲コアにおける原始星・原始惑星系円盤・アウトフローの形成を調べるために、適合格子細分化法(AMR法)を用いた数値シミュレーションを遂行した。従来の研究の多くは、分子雲コアに一様回転を与えて初期条件としたものが多かった。しかし、現実の分子雲コアは乱流を持ち、この乱流が原始星や原始惑星系円盤の回転の起源であると考えられている。したがって、乱流を考慮した分子雲コアにおける星形成の研究が必要である。 本年度の成果はつぎの2点である。 第1点目は、乱流と磁場を考慮したモデルにオーム散逸の効果とシンク粒子も考慮したシミュレーションを遂行した。星形成後の長期的な進化を追跡するために、オーム散逸を陰解法で実装した。さらに原始星をシンク粒子とよばれるサブグリッドモデルで近似した。その結果、原始星形成後約1000年間の進化を追跡することができた。 原始星形成後約1000年間では、分子雲コアが持つ初期の乱流が弱いモデル(平均的な乱流速度が亜音速のモデル)では、原始星が形成しても原始惑星系円盤は成長しなかった。一方、初期の分子雲コアが持つ初期の乱流が比較的強いモデル(平均的な乱流速度が音速程度かそれ以上のモデル)では、原始惑星系円盤は成長し、その半径はほぼ単調に増加した。磁場が強い場合には、原始惑星系円盤の成長は遅いが、磁場によって原始惑星系円盤の成長を完全に抑制することはない。また、オーム散逸によってガスと凍結が解けた磁束が集まり、周囲のガスを押しのける。その結果、原始星のエンベロープに穴を開ける現象を発見した。 第2点目は、今回のオーム散逸に加えて、両極性拡散とホール効果と呼ばれる2つの磁場の散逸機構を陰解法で実装した。C型衝撃波問題とアルフヴェン波の減衰などの典型的なテスト問題を解いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーム散逸を考慮したシミュレーションの計算は完了した。しかし、平成23年度にこの成果を論文にまとめて発表することができなかった。その理由は、震災にともなう節電命令により、いくつかのスーパコンピュータの運用が停止または縮小運転となり、シミュレーションの計算が滞ったためである。 また平成23年度に、3つの磁場の散逸機構(オーム散逸・ホール効果・両極性拡散)を陰解法で実装した。しかし、収束の堅牢性と計算速度の性能に課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に完了したシミュレーションの計算結果を詳細に解析する。その結果を論文にまとめて投稿する。 また、磁場散逸の陰解法スキームの堅牢性を改善する。現在は適合格子細分化法と相性が良いとされるマルチグリッド法を用いているが、場合によってはアルゴリズムを見直すことも視野に入れ、陰解法スキームを改善する。 さらに、平成23年度のシミュレーションでは、原始星形成後約1000年間の進化を追跡したが、平成24年度にはさらに長時間の計算を可能にする方法を検討する。これまでの計算では原始星近傍において局所的にアルフヴェン速度が非常に大きくなる領域が発生し、これが原因で計算が進まなかった。そこで、アルフヴェン速度を人為的に遅くする方法を開発する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に計算したデータを解析するために、ワークステーションを購入する。シミュレーションデータの容量は数TBもあるため、高性能なCPUと大容量のメモリを持ったワークステーションが必要である。
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