本研究の目的は、超高エネルギーガンマ線を放射する大質量連星系(高密度星と大質量星の連星系)の放射メカニズムの統一的なモデルを構築することである。平成25年には、1)数値シミュレーションの研究、2)定式化の研究を行った。 1)数値シミュレーションの研究では、平成24年度に行ったシミュレーションをPSR B1259-63/SL2883連星のパラメーターに適用した。その結果、PSR B1259-63/SL2883連星の観測結果を再現出来ないことが分かった。パラメーターの内、不定生の大きな軌道傾斜角θ、軌道方位角Φを変えたが、説明するには至らなかった。そこで、高密度星(パルサーを仮定)からのプラズマ流(パルサー風)に異方性を取り入れたシミュレーションを行った。数値シミュレーションを大型コンピュータで行う際の端末用途とデータを解析用途のために、河内がパーソナル・コンピューターを購入した。 2)定式化の研究では、大質量星(Be星を仮定)の高密度ガス円盤を定式化し、高密度星(パルサーを仮定)からの相対論的プラズマ流(パルサー風)と大質量星のガス円盤の相互作用領域の位置と圧力の大きさを、科学計算ソフトウェアMathematicaを用いて研究した。昨年度までは、大質量星のガス円盤の圧力として動径方向の動圧を主に扱っていた。しかし、他グループの最新の研究成果から大質量星のガス円盤では等方的な熱力学的圧力が卓越することが示されているので、本研究の定式化に取り入れた。その結果、これまで特徴的であった近星点前後のダブル・ピークは現れないことが分かった。これは、観測結果と矛盾するため、パルサー風の異方性など他の効果を取り入れないと観測を説明出来ないことが分かった。これは、数値シミュレーションの研究と整合性がある。定式化の研究の結果を、内藤がベルギーで行われた国際シンポジウムで発表した。また、ブラジルで行われた国際会議での研究発表の検討に貢献した。
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