研究課題/領域番号 |
23540273
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
今西 昌俊 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (00311176)
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キーワード | 超巨大ブラックホール / サブミリ波 / 赤外線銀河 / 分子ガス / 活動銀河中心核 / 星生成 / 共進化 / 銀河 |
研究概要 |
太陽の1000億倍以上もの光度を赤外線で放射している赤外線銀河は、強力なエネルギー源が塵の向こう側に隠されて存在する天体である。エネルギー源としては、星生成活動(活発に生成される星の内部で起こる核融合反応によるエネルギー生成)、及び、活動銀河中 心核(AGN)活動(超巨大ブラックホールへ物質が落ち込む際の重力エネルギーを放射に変換して明るく輝く活動)が考えられる。赤外線銀河は、赤方偏移が1を超える遠方宇宙(現在から約75億年以上前の宇宙)では、宇宙全体からの赤外線放射を支配していることがわかっており、赤外線銀河という種族の塵に隠されたエネルギー源の正体を明らかにすることは、宇宙初期の塵に隠された側での星生成史、超巨大ブラックホール質量の成長の歴史の解明と密接に関係する。しかしながら、赤外線銀河では、サイズ的に小さなAGN( 質量降着している超巨大ブラックホール)が塵の奥深くにすぐに埋もれてしまい、きちんと見つけ出すことが難しくなるという大きな問題が存在する。 本研究では、1. 塵吸収の影響の小さなサブミリ波に基づく観測から、見つけるのが困難な埋もれたAGNのエネルギー的役割を正しく 見積もる手法を確立させ、2. サブミリ波長帯で高感度のALMAを用いて、近傍から遠方宇宙の赤外線銀河を系統的に観測することを最終目標とする。 本年度は、ALMA Cycle 0に提案し、採択された課題の観測データに基づく研究成果を、筆頭著者の査読論文として2編出版し、3本目の査読論文も筆頭著者として専門雑誌に投稿した。2013年6月のキプロスでの国際会議、2013年9月の日本天文学会秋季年会(東北大学)、2013年9月の台湾での国際研究会、2013年10月のALMA town meetingで成果を口頭発表した。 すばる望遠鏡を用いた赤外線銀河の補足観測も行い、査読論文を筆頭著者として出版した。すばる望遠鏡ホームページでリリースもおこなった。2014年ユーザーズミーティングで、口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ALMAサイクル0で取得された観測データに基づき、査読論文を筆頭著者として2編出版した。3本目の筆頭著者論文も2013年度に投稿した。すばる望遠鏡に基づく筆頭著者の査読論文も出版した。すばる望遠鏡によるリリースも行い、その結果、1. 日本物理学会誌パリティから記事の執筆依頼があり、2014年3月の締切に間に合わせて原稿を提出した、2. 国立天文台のプロモーションビデオに出演し、一般市民向けに超巨大ブラックホールの解説を行った、3. APRIM 2014向けのプロモーションビデオに出演し、国内外の物理/天文学の知識のある大学学部生向けに超巨大ブラックホール研究の魅力の解説を実施した。 4. すばる望遠鏡のあるハワイの地元誌『Hawaii Tribune Herald』,『West Hawaii Today』で研究成果が紹介された。 5. 国立天文台の運営会議で、サイエンスレポートとして成果の発表をした。 6. BS朝日の自然ドキュメンタリー番組『ボクらの地球』のインタビューを受けることになり(2014年4月)、すばる望遠鏡を用いた超巨大ブラックホール研究の一般向け解説、ハワイでの研究生活の話をすることになった。 以上の理由により、本研究の成果は私自身の想定以上にインパクトが大きいことが判明し、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ALMA サイクル2以降でも観測時間を取得し、研究を進展させていくことが最重要である。具体的には、 1. 活動銀河中心核と星生成活動が支配的な銀河によって分子ガス輝線にどのような違いが出るかを、より多くの正体のわかった合体赤外線銀河に対して調べ、研究代表者の得た初期成果をより強固にする。 2. 特徴を持った天体を観測することにより、AGNからの分子ガス輝線強度比に対して、衝突ではなく、赤外線放射励起が効いているかを、定量的に明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
悪天候やストライキにより、ALMAサイクル1の観測実行が当初の計画より遅れており、観測データが我々の手元にやって来るのも遅れている。その結果、ALMAの観測データに基づく国際学会での成果発表も当初の計画より少なくなっている。国際研究会参加のための旅費、滞在費を次年度に繰り越す状況となっている。 国際研究会で積極的に成果発表をするために使用する。
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