研究課題
西チベットにおける天文サイト調査で昨年度(平成22年)から重点地域になっているアリ地区ガー山(Gar Site)に、天体観測環境評価装置を設置し、調査を開始した。中国共同研究者と調査方針の協議を行って、調査方針をとりまとめた。協議および装置設置と調査実施のために、北京、アリ地区に平成23年度に2度研究者(それぞれ4名と2名)を派遣した。 設置された天体観測環境評価装置は、赤外線雲モニタカメラ、気象観測機器、ダストカウンター装置である。2度の研究者派遣による装置の調整によって、その後は無人越冬観測を継続している。 天文サイト調査地域アリ地区ガー山は標高5100mであり、地表の約半分の気圧しかない過酷な環境であるので、派遣者の健康には十分注意を払う必要がある。血中酸素濃度と心拍数を測定するパルスオキシメータおよび異常時の対策品として携帯酸素発生器を本研究費で購入して、研究者派遣時に携行して用いた。 アリ地区ガー山での電力供給が不安定である可能性が高いので、その電力モニターのための装置を購入・設置して、電力異常時の調査データの識別をはかれるようにした。アリ地区ガー山での超低温環境下でも制御計算機が安定的に動作するように工業用計算機を導入する準備を行った。
2: おおむね順調に進展している
西チベットにおける天文サイト調査重点地域のアリ地区ガー山の天体観測評価を行うために、天体観測環境評価装置を設置し、天体観測条件調査を継続的に行うことが本研究の目的である。使用予定の天体観測環境評価装置は、赤外線雲モニタカメラ、微熱乱流測定装置、気象観測機器、ダストカウンター装置である。微熱乱流測定装置以外は、装置設置、初期調整ののち自動測定モードに入り、継続的な測定を行っている。初年度に天体観測環境評価装置を天体観測条件調査地点に設置して、調査を開始するという初期の目標はほぼ達成されている。なお、微熱乱流計測センサを地上高30-40mの鉄塔上に設置する必要のある微熱乱流測定装置は、鉄塔の設置が次年度(平成24年)になるので、次年度に設置予定である。 2度の研究者派遣により、中国共同研究者との共同作業、協議が行われ、科学的検討とともに相互の信頼関係も醸成されたことは表には出ないが貴重で重要なことである。派遣研究者の健康にも留意をし、超低酸素環境地域であるアリ地区ガー山の派遣も無事遂行された。
西チベットにおける天文サイト調査重点地域のアリ地区ガー山に設置された天体観測環境評価装置を継続運用する。サイト訪問時に装置の診断をし、必要であれば保守調整あるいは部品保守を行う。無人越冬観測で得られた天体観測評価データを回収し、解析を行って初期評価を行う。そのために、研究者をアリ地区ガー山に派遣する。 天体観測の天体像を大きく乱す地上付近の大気擾乱を測定する微熱乱流測定装置は、その微熱乱流計測センサを設置する鉄塔が次年度(平成24年)に新設されるので、微熱乱流測定装置の設営のために研究者をアリ地区ガー山に派遣する。 天体観測環境評価装置を運用する制御計算機は現在商用パソコンを用いている。アリ地区ガー山の冬期は氷点下25度にもなり、氷点下対策をとってはいるが安定動作を保証するものではない。制御計算機を工業用計算機に交換して安定運用を図る必要がある。工業用計算機はすでに、本機と予備機を購入済みであり、データ保持のためのディスクもSSD(Solid State Drive)を用いる準備をしている。 今後の2年強の継続的な天体サイト調査によって、通年での天体観測環境の変化、経年での変化の傾向を押さえることを目指している。
次年度の研究費は、アリ地区ガー山に設置された天体観測環境評価装置の保守運用、取得された天体観測評価データを回収することと併せて微熱乱流測定装置の設営のために、研究者のアリ地区ガー山派遣費用として用いる。また、天体観測環境評価装置の保守部品として消耗品購入に充てる。 今年度前倒し請求(40万円)により制御計算機のための工業用計算機購入などの物品費として使用したが安価な代替品等を用いて倹約し残額が生じた。この残額は、次年度経費と合算し、旅費、物品費などとして研究経費として使用する予定。
すべて 2011
すべて 学会発表 (2件) 図書 (2件)