研究課題
西チベットにおける天文サイト調査で平成22年度から重点地域になっているアリ地区ガー山に、天体観測環境評価装置を設置し、調査を実施している。平成22年度末までの天文サイト調査結果を、2012年4月に北京で開催された東アジア中核天文台連合主催のサイト・サーベイ研究会で発表し、関連する東アジアの研究者と調査方針の協議を行った。ガー山に設置された天体観測環境評価装置は、赤外線雲モニタカメラ、気象観測機器、ダストカウンター装置である。2度の研究者派遣を予定したが、6月期にはチベット入境制限が発令され訪問することはできなかったが、12月期に1名派遣によって測定データの回収、機器の保守、制御計算機の更新を行った。回収されたデータを解析し、冬期の低温環境下で得られた赤外線雲モニタカメラによる雲量分布データから、2011年11月から2012年1月の晴天率は、平成21年度まで調査していた西チベット・オマ地区およびすばる望遠鏡のあるマウナケア山と同程度であることを確認し、2013年3月の天文学会等で発表した。また、同時期に気象観測機器で測定した風速データから冬期のガー山環境は強風環境であることが判明し、晴天率の良いアリ地区内で風速環境が穏やかな別の地域を選択する必要性を明らかにし、今後の調査の方針を示した。新規に設置された制御計算機として、ガー山の低温環境下でも安定的に動作するように工業用計算機を選択し購入した。その後、更新された機器、制御計算機によって無人観測を現在継続している。サイト調査機器や制御計算機の状況を日本から確認するためにインターネットを利用して行えるように小型工業用計算機を購入し、UNIX系システムを設定して次年度訪問時に設定できるように準備を開始した。
2: おおむね順調に進展している
西チベットにおける天文サイト調査重点地域のアリ地区の天体観測評価を行うために、ガー山に天体観測環境評価装置を設置し、天体観測条件調査を継続的に行うことが本研究の目的である。使用予定の天体観測環境評価装置は、赤外線雲モニタカメラ、微熱乱流測定装置、気象観測機器、ダストカウンター装置である。2年度に継続的に天体観測環境評価を実施するという計画は順調にすすんでいる。微熱乱流測定装置以外は、装置設置、初期調整ののち自動測定モードに入り、継続的な測定を行っている。予定されていた微熱乱流計測センサを地上高30-40mの鉄塔上に設置する計画は、チベット入境制限があり、準備が進まず次年度以降に繰り延べになった。サイト調査機器によって取得されたデータを解析し、当該サイト・ガー山の初期的評価が進んだ。晴天率については想定していたように高評価であった。しかし、気象観測機器による測定によりガー山は強風環境であることが判明し、晴天率は高いが望遠鏡設置には良い環境でないことが明らかになった。そのため、アリ地区内の、ガー山より天体観測環境の良いサイトを新規に選択し、調査を行う準備を進めている。サイト・サーベイ研究会でのサイト調査の現況発表により東アジアの研究者にチベットアリ地区の天文観測サイトとしての重要性を報告できたのは重要な成果である。研究会発表を含め2度の研究者派遣により、中国共同研究者との共同作業、協議および科学的検討をすすめ相互の信頼関係もさらに醸成されてきている。派遣研究者の健康にも留意をし、超低酸素環境地域であるアリ地区ガー山の派遣も無事に遂行している。
西チベットにおける天文サイト調査重点地域アリ地区のガー山に設置された天体観測環境評価装置を継続運用する。サイト訪問時に装置の診断をし、必要であれば保守調整あるいは部品保守を行う。欠落している夏期観測を含めた無人観測で得られた天体観測評価データを回収し、解析を行って通年でのガー山の天体観測条件評価を行う。そのために、研究者をアリ地区ガー山に派遣する。天体観測の天体像を大きく乱す地上付近の大気擾乱を測定する微熱乱流測定装置は、その微熱乱流計測センサを設置する鉄塔が平成24年度に新設されたので、微熱乱流測定装置の新設をはかり、設営のために研究者をアリ地区ガー山に派遣する。サイト調査機器や制御計算機の状況を日本から確認するためにインターネットを利用して行えるように購入した小型工業用計算機をガー山のサイトに設置し、ガー山で利用可能となったインターネット環境に接続し、日本からの遠隔モニターを計画している。高風速環境であるガー山の初期評価に基づき、アリ地区内のガー山より天体観測環境の良いサイトを訪問し、その状況を評価することを計画している。今後の2年間の継続的な天体サイト調査によって、通年でのガー山の天体観測環境の評価を取得すると共に、アリ地区内の最良のサイトを選定して、将来の東アジア共同の望遠鏡サイトの選定を目指す。
次年度の研究費は、1)アリ地区ガー山に設置された天体観測環境評価装置の保守運用のために、2)取得された天体観測評価データを回収するために、3)微熱乱流測定装置の設営のために、および、4)アリ地区内の天体観測環境の良い新規サイトを訪問し評価するために、研究者のアリ地区への派遣費用を主とする。また、新規サイトの評価のために気象観測機器が必要な場合はその購入も予定している。昨年度前倒し請求(40万円)により生じた繰越金は、インターネット接続用の小型工業用計算機購入などの物品費として少額使用したが、残額が生じた。この残額は、次年度経費と合算し、旅費、物品費などとして研究経費として使用する予定である。
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