研究課題/領域番号 |
23540276
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
相馬 充 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (30187885)
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研究分担者 |
上田 暁俊 国立天文台, 重力波プロジェクト推進室, 助教 (30332159)
谷川 清隆 国立天文台, 理論研究部, 特別客員研究員 (80125210)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 韓国 / 国際情報交流 インド・中国 / 位置天文学 / 歴史天文学 / 地球自転変動 / 日月食・星食 / アジア天文学史 |
研究概要 |
國學院大學大学院生の協力を得て、旧唐書と新唐書の麟徳暦の暦法に関する解説を読み解き、麟徳暦の暦日の計算式を組み立ててその暦日を推算できるようにした。続日本紀では和銅年間(西暦708~714年)に儀鳳暦が使用されている。日本の儀鳳暦は麟徳暦の別称とされているのに、続日本紀と旧唐書で干支の書かれている日付を探し出したところ、日本と唐で同じ月日の干支が異なるものがいくつもあることが確認できた。この差異について考察を行ったが、差異の原因についてはさらなる研究が必要である。 皇極天皇2年5月16日(西暦643年6月8日)の月食は日本書紀に記録されていながら、日本では観測不可能であったことが知られていて、当時の暦法による予測をそのまま記録したものとの推測がなされていたが、当時の暦法による推算はこれまでなされていなかった。我々は当時使われていた元嘉暦による暦日と月食の計算式を組み立て、元嘉暦で計算しても、この月食が日本で日入後の昼間に起こることになることを明らかにした。したがって、この記録がなされた原因の詳細は、まだ不明である。 韓国から4名の研究者を招待し、韓国の古代天文記録について議論した。また、群馬大学の研究者と越南の歴史書にある日月食記録について信頼性を議論した。インドの古代日食記録についてはインドの研究者と協力して、記録の発掘に努めている。これらについては、地球自転角パラメータΔTの決定に寄与すべく、次年度の研究に引き継ぐ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の暦法の研究については、当初の計画以上に進んだ。朝鮮と越南の記録については、だいたい計画どおりに調査が進んでいるが、中国とインドの記録については、まだ十分な記録が得られたとは言いにくい。全体としては、研究がおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
紀元1000年までの1000年間の東アジアおよびインドの天文学の特徴を中国の天文学と比較しつつ明らかにする。各国に残されている天文記録をまとめ、かつ、申請者らが開発した独自の手法によってその信頼性を吟味する。これによって西アジアを除くアジアの天文学の全体像を描くことを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は日本の暦法や朝鮮の記録の研究等を行った結果56,167円の残額が生じた。これは次年度に請求する研究費と合わせて以下に述べる研究活動に使用する。次年度は朝鮮・越南・中国・インドの古代天文記録を引き続き発掘し、地球自転パラメータΔTの精密決定に使えるかどうかを調査する。中国の場合は後漢から北宋初期までの王朝ごとに観測項目を整理し、項目ごとの観測頻度を調べ、王朝ごとの特徴を出す。インドと朝鮮の記録はそれぞれの国の研究者の協力を得るため、現地に赴くか彼らを招待するなどして、東アジアの天文学について議論する。越南の記録については引き続きその国の記録についての日本の研究者の協力を得る。中国については中国西安の北西大学の研究者と意見交換を行い、研究協力を取り付ける。
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