研究課題
昨年投稿した論文は、24年度末に取り足したデータを加えてリバイズし、ApJ誌に掲載された。一方より高分解能なデータの取得を目指し、ALMAでの観測を提案したが、残念ながら受理されなかった。しかし科学的な評価は十分高く、観測の技術的な問題に対する記述が不十分であったためと考えられる。特に微細な構造からの微弱な信号を、大きな構造からの強い信号と分離し、干渉計で精度よく観測するための説得力のある記述が不十分であった。このようなことを考慮に入れ、特に事前に観測をシミュレーションするなどして改訂し、再度プロポーザルを提出する予定である。また、乱流と共に分子雲の構造形成に大きく影響すると考えられている磁場の観測をするため、南アフリカのIRSF望遠鏡を用い、へびつかい座のフィラメント状分子雲方向にある背景星の近赤外線偏光観測を行った。観測は天候も比較的良好で、フィラメントの広い範囲を観測することができた。これらと電波の観測を組み合わせることで、磁場が星間乱流に対してどの程度卓越し、フィラメント状構造の形成にどのように影響したか調べることを目的としている。近赤外線データは現在解析中で、結果は電波観測で得られるガスの運動と比較し、乱流の量、分子雲の形状、そして磁場の向きが、相互にどう関連するのかを調べる予定である。このフィラメント状分子雲の分子ガスのデータは、25年度中にMOPRA望遠鏡を用いた電波観測を行い取得する予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、近赤外線の偏光という新しい観測を行い、磁場との比較に必要な基礎データの取得ができた。一方でALMAの観測プロポーザルは残念ながら採択されなかったが、レフェリーからのコメントは決して否定的ではなかったので、技術的側面の再検討を進めている。MOPRA望遠鏡への観測提案は準備中であるが、オーストラリアの天文台でおきた山火事の影響で、前期の観測の実施と後期の観測募集が遅れているという連絡があった。望遠鏡自体には大きなダメージは無く、復旧のめどは立っているとのことであるが、募集はまだアナウンスされていない。24年度中に発表した国際会議では、国内外の研究者の興味を引くことができ、理論研究者との議論がすすんだ。否定的な意見を持つ研究者もいるようであったが、さらに観測データを示すことでより説得力が増し、合意を得られると自信を深めた。
今年度はまず、近赤外線のデータ解析を終了させ、分子雲内の磁場構造と、乱流量の比較を行う。特に近赤外線は分子密度が濃い部分を見通すことができ、高密度領域での磁場と乱流が分子雲の構造形成に、どのような影響を与えているのかを調べる。研究代表者は近赤外線の観測は専門ではないが、この分野で経験の豊富な研究者と一緒に観測を行い、さらに解析も協力して進めている。ここで得られた結果を、今年度のALMAのプロポーザルに反映させ、さらに理論モデルとの比較にも取り入れる。数値シミュレーションの専門家である共同研究者との議論をさらに深め、観測データと磁場の効果も取り入れたモデルとの直接的な比較を進める。
23年度に購入したPCを、24年度に取得した近赤外線のデータ解析に用いて、基礎的な解析はほぼ終えている。一方より巨大なデータになると思われる、ALMAの観測は行うことができなかったので、24年度中でのデータディスクなどの購入は見送ったが、25年度の購入を予定している。MOPRAの観測が認められれば、観測の実行のため出張旅費として予算を使いたい。さらに国際会議での発表のための出張を予定している。
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