研究課題
前年度終了の科研費「宇宙に於けるエネルギー收支の型録化と交互作用の試驗」に於いては星形成に從って生成される事が予想される宇宙塵は予想どおりの量が觀測的に見出される事を示した。但し其の半分以上の量は銀河内にあるのではなく銀河の外に吹飛ばされてゐる。本年度の研究では此等銀河外空間の塵の大きな部分が所謂MgII吸收線天體と呼ばれる銀河系外雲の中に存する事を示した。SDSSの高い測光精度を生かし數萬個に上るクェーサーを集めMgII吸收線を示すクェーサーと示さないクェーサーの廣帶域測光を比べ前者が宇宙塵による紫外光の吸收を受けてゐる事を明らかにすると共に、それら宇宙塵が吸收線雲に含まれると推定されることを示したのである。更に吸收線雲の水素量を評價しdust/hydrogen比が約1/100と通常の銀河と同じ値を示し、吸收線雲は星形成を示さないと考へられる事より吸收線雲は銀河のガスが銀河風によって吹飛ばされたものが集積したものと考へられる事を明らかにした。これは從來その成因が不明であったMgII吸收雲の正體に關して有效な知見を與へるものである。 この他惑星系の外縁Edgeworth-Kuiper帶に其存在が推測される宇宙塵は太陽光を受け宇宙マイクロ波を再放出し、其放射がマイクロ波非等方性のモメントに相當寄與する事を示し、其樣な過剩成分がWMAP衞星で檢出されてゐない事より宇宙塵存在に關して有效な制限が既に得られる。更に現在觀測を始めたPlanck衞星は其利用振動數が高い事によりWien/Rayleigh-Jeans比を大きく改善し此樣な宇宙塵が若し存在するなら觀測される可能性がある事を示した。宇宙塵の微粒子極限の振舞ひは宇宙エネルギー收支の考察にとって無視出來ない要素の一つである。
3: やや遅れている
研究の進捗状況は三割程度の遲れがある。これは主要結果は既に導出されてゐるが、細い點で精査を要する事項が途中、特に仕上げの段階で見附かる爲であり研究の通常の遲延と云ってよい。これ以外には投稿後論文査讀審査に掛る時間、呈示された疑問點に對する對應に掛る時間(一部再計算を必要とする場合がある)が予測出來ない事である。
9.で述べた知見に基づきmissing baryonの問題を檢討する必要がある。更に昨年度よりの懸案事項となってゐる銀河外に飛散した宇宙塵の存在形態の問題を檢討する必要がある。更に數年前に予備的研究を行ってゐる宇宙輻射量の問題にも片を附ける必要がある。これはこの問題が前二者の問題と密接な關係を持つ故である。
論文投稿料必要次第に、研究連絡の爲の(海外)出張及び海外よりの共同研究者の招聘すること。過去三年間のまとめの報告書作成。
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Astron. J.
巻: 143 ページ: :119(15pp)
10.1088/0004-6256/143/5/119
巻: 143 ページ: :120(14pp)
10.1088/0004-6256/143/5/120
Astrophys. J.
巻: 736 ページ: :122(7pp)
10.1088/0004-637X/736/2/122