研究概要 |
宇宙エネルギーの勘定は大部分の成分に関する各銀河内に存在する物質とエネルギーの評価を存在が知られ亦は結論される銀河に亘って足上げれば良いという基本原理に基づいており此れが常識な考え方である。併し宇宙エネルギーの考察中茲二、三年程の間に我々が気付いたのは今迄暗黙の了解とされていた様に銀河はその重力束縛半径内での閉じた系を造っているので無く銀河構成成分の少なくとも幾つかは従って対応するエネルギー成分も銀河領域外へ漏出している事である。即ち銀河内のエネルギーを足合わせるだけでは矛盾の無い勘定が得られない。最も顕著なのは銀河質量の大部分を占める暗黒物質である。(Masaki,Fukugita,Yoshida 2012)暗黒物質の約50%が銀河の重力束縛半径外に存するものと見積られ此れは最新の大規模サンプルを用いて可能となった弱重力レンズ効果の観測結果を説明する。のみならず過去に為され現在殆ど忘れ去られている銀河を用いた宇宙質量密度評価とその大局的評価の矛盾を解消する。同様の事は宇宙dustについても然りである。銀河で生成されるdustは約半分が銀河外へ吹飛ばされこの内更に半分が「MgII吸収線天体」と呼ばれる天体に存する事が準星より発せられる光の微小な減光効果の検出により示された。詳細な解析はMgII吸収線天体は恐らくは近傍銀河の活動によって吹飛ばされたガスの集合体であるらしい事が示された(Menard, Fukugita 2012)。但しこれに似た天体であるDamped Lyman alpha吸収線天体が何の様な物であるか今のところ不分明である。かくして宇宙エネルギーとその無矛盾性の考察は今迄の常識的な考え方が不満足な物であった事を明かにするのに役立っている。私の推進している宇宙エネルギー収支型録は先ず銀河周辺部のより正確な知見と理解を必要とし現在その方向に轉進しつつある。
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