研究課題/領域番号 |
23540289
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 斉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (20222341)
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キーワード | 国際研究者交流(欧米・アジア) / 国際情報交換(欧米・アジア・中南米) / 加速器実験 / 余剰次元 / 超対称性 |
研究概要 |
LHC 実験がすすみ、ヒッグス粒子が発見されたが、一方標準模型を超える物理の存在はまだヒントすらない。ヒッグス粒子の性質の詳細測定はまだこれからだが、現在では標準模型の予言と誤差を含めるとほぼ合っていると言ってよい。更に、ヒッグス粒子の質量が126 GeVであることから、最も簡単な超対称性の模型で期待される質量よりもかなり高めに出ている。これを総合すると、超対称性粒子は、階層性問題を解くために期待されていた軽い質量には存在せず、もっと重く、ファイン・チューニングが必要とされる領域に入って来る。残念ながら当初の研究実施計画で期待していた情報は出て来ていない。 H25年度はこの状況を踏まえて、ファイン・チューニングを最大限避けるヒッグスの模型を提案した。シングレットを用いた超対称性の模型は NMSSM などがよく知られているが、シングレットが重くなるとともにファイン・チューニングが再燃する。我々はシングレットでもディラック型のものを導入することで、重くしてもファイン・チューニングに効かないセミ・ソフトという新しい形の超対称性の破れのパラメータを発見した。これによって既に0.3%程度のファイン・チューニングが必要なMSSMと比較し、数パーセントですむ模型が可能であることを示した。 更にヒッグスの精密測定から新物理を探る方法を提案したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画に提案した通り、超対称性や余剰次元理論の予言を詳細に調べ、公表された実験データとの比較を地道に行うことで、超対称性の破れや余剰次元のコンパクト化の機構の可能性を絞ってきた。特にH24年度に出版した compact supersymmetry では余剰次元によって超対称性を破る、今まで検討されてこなかった可能性を提案し、実際に実験データと比較してファイン・チューニングを弱められることを示した。またヒッグス粒子の質量が解ったことから、最小の超対称性模型 MSSM では0.3%程度のファイン・チューニングが必要になってきているが、ディラック型の NMSSM という模型を提案し、シングレットの質量が重くてもファイン・チューニングに効かないという新しいタイプの超対称性の破れのパラメータがあることを発見した。おおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は LHC や将来の ILC で、見つかったヒッグス粒子の精密測定が進んでいく。今まではっきりしていなかったことは、精密測定から得られるデータが、具体的にどのような模型にどのような制限を与えるのか、どいうことであった。幸いヒッグス粒子の有効理論の研究が最近進んで来たため、この枠組みを使うことによって、この問題に迫ることができるようになって来た。既に Brian Henning、Xiaochuan Lu とともに、第一次相転移を起こす可能性については、ILC の精密測定で排除できることを示した。この研究を煮詰め、今後発表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度にヒッグス粒子の質量に注目し、超対称性模型でありながら、126GeVという値がファインチューニング無しで説明出来る模型を構築した。singletを入れるだけで、自己相互作用を簡単に大きく出来るという理論的に興味深い構造を持つ模型の現象論を調べたが、分野の研究者と議論する適切なミィーテングが年度内に十分に持てなかった。 分野の研究者とのミーティング、研究会や会議で討論等に使用する旅費の経費に充てることとしたい。
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