研究課題/領域番号 |
23540290
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 克司 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60221769)
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研究分担者 |
佐藤 勇二 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 助教 (50312799)
酒井 一博 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (10439242)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 素粒子論 / 超対称性 / ゲージ重力対応 |
研究概要 |
ゲージ重力対応に基づいた、N=4超対称ゲージ理論におけるグルーオン散乱振幅と反ドジッター時空中の極小曲面の面積の対応を研究した。n点グルーオン散乱振幅について摂動論から予想されている、Bern-Dixon-Smirnov公式からのずれであるremainder関数の強結合領域における解析的構造を、可積分模型特に2次元共形場理論の可積分摂動により理解することを目標とした。今年度は特に,特別な外線運動量の配位をもつ2n点散乱振幅に対応する極小曲面である,AdS3反ドジッター時空中の2n点個の尖点を有する光的境界で囲まれた極小曲面のremaider関数について考察を行った。極小曲面のremaider関数を一般化されたparafermion模型の可積分摂動と熱力学的ベーテ仮説方程式の方法で評価を行い、以下の結果を得た。(1)remainder関数に現れるグルーオン運動量の複比は可積分模型におけるY関数またはT関数であることが知られている。その解析的評価を、境界をもつ共形場理論の境界エントロピーを測る量であるg関数の比で行えることを示し、8点及び10点関数のremainderの解析展開を具体的に行った。さらに摂動的な2ループ公式との比較を行い両者が近い値をもつことを見いだした。(2) 一般の2n点関数のremainder関数を可積分模型におけるY-系およびT-系で特徴づける簡明な公式を発見し、その解析的な評価を行った。さらに2ループ公式との比較を行い、両者が異なるが近い値を持つことを見いだした。(3) 研究の基礎となる,超対称ゲージ理論のオメガ背景場変形や超弦理論のインターフェース等可積分構造に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AdS3時空中の極小曲面に関するremainder関数について,その10点関数の解析展開の具体式が境界共形場理論のg関数と関係していることや,可積分模型におけるT関数やY関数等を使った2n点の場合の一般的な公式が得られたのは大きな発見であった。またこの強結合領域の評価式が2ループの摂動解と非常に近いということも予想しない発見であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で得られたAdS3時空の極小曲面のremainder関数の解析解をより一般的な反ドジッター時空であるAdS4およびAdS5中の極小曲面の場合に拡張することを目標とする。その上で重要となるHomogeneous sine-Gordon模型の可積分構造と、一般化されたparafermion模型の可積分摂動の関係について研究を行う。今年度の研究において、2次元共形場理論の多パラメータ可積分変形と対応する熱力学的ベーテ仮説およびY-系、T-系等の新しい手法を確立することが必要となることが明らかになった。特に熱力学的ベーテ仮説方程式に現れる外線運動量の複比に対応する質量パラーメタと共形場理論の摂動演算子の結合定数の関係(mass-coupling関係式)を一般化されたparafermion模型の場合に確立することが重要であることがわかったので、この関係についての研究を推進する。そしてremainder関数の解析的構造の高次項まで含めたさらに詳細な性質を明らかにしていく。またグルーオン散乱振幅以外にも相関関数や構造因子、さらにクォーク反クォークポテンシャル等興味深い物理量の可積分模型に基づく理解が進展しているので、このグルーオン振幅の研究の過程で確立しつつある手法を他の物理量の評価に適用することを考える。これにより超対称ゲージ理論や超弦理論の背後にある可積分構造の原理的な理解を目指せるものと期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を引き続き研究分担者との緊密な連携のもと系統的に進めていく。共同研究者との定期的な研究打ち合わせや、集中的な共同研究を行う。また可積分模型の専門研究者や関連する共同研究者をセミナーに招き、集中的な議論を行う。国内外の研究会や関連研究者のいる大学、研究所を訪問し、研究発表および議論を行う。23年度は3月後半の出張があったため執行時期が遅れたが、既に23年度の経費は支出済みである。
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