研究課題/領域番号 |
23540290
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 克司 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60221769)
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研究分担者 |
佐藤 勇二 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 助教 (50312799)
酒井 一博 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (10439242)
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キーワード | ゲージ理論 / AdS/CFT対応 / 超対称性 |
研究概要 |
ゲージ重力対応により期待される、N=4超対称ゲージ理論におけるグルーオン散乱振幅と反ドジッター時空中の極小曲面の面積の対応を調べることにより、ゲージ重力対応(AdS/CFT対応)の厳密な検証を目的とした。具体的には、N=4超対称ゲージ理論におけるn点グルーオン散乱振幅について、摂動論から予想されているBern-Dixon-Smirnov公式からのずれであるremainder関数の強結合領域における解析的構造を、2次元の可積分模型特に2次元共形場理論の可積分摂動により理解するとを目標とした。 前年度で得られた、平面的な外線運動量の配位をもつ2n点散乱振幅の場合に対応する、AdS3反ド・ジッター時空中の、2n点個の尖点と光的境界をもつ極小曲面のremaider関数を拡張して、今年度は、より一般的な空間的配位をもつAdS4反ド・ジッター空間中の極小曲面を研究した。 AdS4内の極小曲面のremaider関数を一般化されたparafermion模型の可積分摂動と熱力学 的ベーテ仮説方程式の方法で評価を行い、以下の結果を得た。 (1)6点および7点振幅に対応するremainder関数の解析的展開を行い、その支配的な補正項を厳密に計算した。(2) 6点振幅の場合に知られている摂動的な2ループ公式との比較を行い両者が近い値をもつことを見いだした。(3) 研究の基礎となる,超対称ゲージ理論のオメガ背景場変形、超弦理論のインターフェース、E型弦理論とM5ブレーン等ゲージ理論における可積分構造に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AdS3時空中の極小曲面に関するremainder関数について,境界共形場理論のg関数との関係や,可積分模型におけるT関数やY関数等を使った2n点の場合の一般的な公式が得られたのは大きな発見であり、またこの強結合領域の評価式が2ループの摂動解と非常に近いということも予想しない発見であった。佐藤はこの研究に関して国際研究集会で多くの招待講演を行った。 AdS3散乱振幅はグルーオンの運動量が平面内にある場合であり、特殊な運動量配位の場合であったが、これがより一般の空間的運動量配位に拡張できたことが大きな進展である。さらに6点関数の場合は摂動論的な結果と近い結果であり、この物理的な理由の解明が今後の大きな課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で得られたAdS4時空の6点および7点振幅に対応する極小曲面のremainder関数の解析解をより一般のn点関数に拡張すること、さらにゲージ重力対応において最も一般的な反ドジッター時空であるAdS5中の極小曲面の場合に拡張することを目標とする。 その上で重要となるHomogeneous sine-Gordon模型の可積分構造と、一般化されたparafermion模型の可積分摂動の関係について研究を行う。2次元共形場理論の多パラメータ可積分変形と対応する熱力学的ベーテ仮説およびY-系、T-系等の新しい手法が必要となることが明らかになっている。特に熱力学的ベーテ仮説方程式に現れる質量パラーメタと共形場理論の摂動演算子の結合定数の関係(mass-coupling関係式)を、一般化されたparafermion模型の場合に確立することが重要であることがわかった。これはAdS4の7点に対応する場合については進展したが、さらにこの関係の一般化を行う。そしてremainder関数の解析的構造の高次項まで含めたさらに詳細な性質を明らかにしていく。 またグルーオン散乱振幅以外にも相関関数や構造因子、さらにクォーク反クォークポテンシャル等興味深い物理量の可積分模型に基づく理解が進展しているので、このグルーオン振幅の研究の過程で確立しつつある手法を他の物理量の評価に適用することを考える。 これにより超対称ゲージ理論や超弦理論の背後にある可積分構造の原理的な理解を目指せるものと期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はインターネット用いた共同研究や国内研究会の際に情報交換を行ったため効率的に研究費が使用できた。その分の旅費を翌年度実質的な共同研究のため使用することにした。さらに今年度都合がつかず参加できなかった国際研究集会Integrablity in Gauge and String Theoryに次年度参加するための旅費を翌年に回すことにした。 次年度は本研究を引き続き研究分担者との緊密な連携のもと系統的に進めていく。共同研究者との定期的な研究打ち合わせや、集中的な共同研究を行う。また可積分模型の専門研究者や関連する共同研究者をセミナーに招き、集中的な議論を行う。国内外の研究会や関連研究者のいる大学、研究所を訪問し、研究発表および議論を行う。
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