凝縮系物理学の視点から宇宙物理を広くとらえなおした。特に以下の3視点から研究を進めた。これらは発展的にまとめたものを投稿準備中である。 a.【BEC宇宙論と宇宙項の微調整問題】通常のスカラー場モデルにおいて必須であった宇宙項の零点微調整は、BEC宇宙モデルでは不要であることを示した。つまり負のポテンシャル領域においては場の局所的な不安定性が卓越してBECは崩壊するので、いつでも宇宙は臨界点(零エネルギー)近傍に漸近する。インフレーション後の粒子生成も考慮して線形計算に基づく崩壊スケールを計算した。この発展として、非線形の不安定性を考える球対称モデルでBEC崩壊を計算しつつある。 b.【変光星の結合部分系モデル】星の周期的活動性を記述する結合部分系モデルを構築した。これは惑星や太陽における磁場変動を記述する結合スピンモデルの素直な発展である。非線形領域から線形領域まで記述する幅の広いモデルであり、周期的変光星、準周期的変光星、半規則・不規則変光星を統一的に議論できる。特に2次元に拡張したモデルを解析した。中間結合領域で1/fのべき的スペクトルが得られ、ミラ型変光星の一部に普遍的に見られるスペクトルを再現している。 c.【初期宇宙における古典・量子結合と測定過程の物理】一般に、量子測定過程はミクロ系とマクロ系の不可逆的相互作用系である。星の磁場変動を記述する結合スピン系を量子化したモデルを提案し、量子測定過程を物理的な時間発展として自律的に記述した。量子トンネル確率の時間尺度で、量子・古典が区別されることを提案し、有効な量子測定過程の時間尺度の条件を求めた。両者の正のフィードバックにより有効な測定が行われ、系の初期ランダムさと非線形性の大きさの最適化から、ボルンの規則が近似的に得られた。現在、弱測定や量子ゼノー測定、連続測定に応用した計算を進行している。
|