研究課題/領域番号 |
23540292
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小池 裕司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60262458)
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研究分担者 |
田中 和廣 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70263671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | シングルスピン非対称 / 3グルーオン相関 / クォーク・グルーオン相関 / 摂動QCD |
研究概要 |
本研究課題の最も重要なテーマである高エネルギー過程におけるシングルスピン非対称の研究を行った。この特異なスピン偏極現象は,ハドロン中のパートン間多体相関によって引き起こされることが知られているが,今年度の研究では,横偏極核子中の「クォーク・グルーオン相関」と「3グルーオン相関」の寄与をいくつかの重要な物理的過程について明らかにした。前者については,ブルックヘブン国立研究所のRHIC加速器で行われている核子核子衝突における軽い中間子(π,K,ηなど)生成のシングルスピン非対称の解析を行い,特に,クォーク・グルーオン相関の中でも以前の研究で無視されていた「ソフト・フェルミオン極」と呼ばれる新たな寄与が重要な役割を果たしていることを示し,今後のRHIC実験に対し予言を与えた。3グルーオン相関については,やはり,RHIC実験で進行中のD中間子生成,直接光子過程,ドレル・ヤン過程に対する,その寄与を表す解析公式を導出した。また,D中間子生成に対するシングルスピン非対称の初期の実験データと比較し,3グルーオン相関に対する大まかな評価をした。それを基に,直接光子過程についても3グルーオン相関の重要性を示した。さらに,3グルーオン相関の寄与に対する,際立った簡約公式を導出し,それが高次補正効果を取り込む際の重要な武器となることを示した。これらは,高エネルギースピン物理分野で謎であったシングルスピン非対称の起源の定量的解明をするうえで極めて重要な成果である。また,それにより,核子中での単純なパートン描像を超えたパートン間多体相関を明らかにしていく上でも極めて重要な成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の最大の目的は,3グルーオン相関の様々な過程におけるシングルスピン非対称(SSA)に対する寄与を表す解析公式を求めることにあった。前年度に達成した電子ー核子衝突におけるD中間子生成過程でのSSAに対する寄与の定式化を,今年度は、RHICで進行している核子ー核子衝突におけるD中間子生成過程,直接光子過程,ドレル・ヤン過程に応用して完成させ,更に,核子核子衝突での軽いハドロン生成過程への拡張に取り掛かれた成果は予想以上である。他方,SSAに対する他の重要な寄与である「ツイスト3破砕関数」の寄与については,その定式化についてまだ未解決な部分があり次年度の課題である。クォークグルーオン相関の寄与については,今年度は特に予定していなかったが,前年度に行った数値解析結果を基に,RHICで測定が進行中の過程に対する予言を与える一方,ドレル・ヤン過程と直接光子過程に対する公式を完成させた。このように,予定以上に進行したものがある一方で,予定よりも進行しなかった部分があるため上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
シングルスピン非対称の研究では,今年度に着手した3グルーオン相関の核子ー核子衝突における軽いハドロン生成過程への寄与に対する解析公式を完成させる。次に,J/ψ粒子生成に拡張する。この過程のシングルスピン非対称は純粋に3グルーオン相関の寄与のみで表されるため,完成したらRHICのデータとの比較をし3グルーオン相関の大きさを評価する。更に,ツイスト3破砕関数のシングルスピン非対称への寄与を定式化する。この定式化は,まず電子ー核子衝突におけるハドロン生成過程を用いて行い,それを核子ー核子衝突過程へと拡張してゆく。後者に対する解析公式が完成したら,これまでに求められているクォーク・グルーオン相関や3グルーオン相関の寄与と合わせ,RHICにおけるπ,K,η中間子に対するシングルスピン非対称のデータの解析を行う。次に,シングルスピン非対称の研究で用いてきた摂動QCDにおける高次ツイスト効果の解析手法をパートンのエネルギー損失へと拡張してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
Mathematicaの購入を予定していたが,すでにあるデスクトップ上のものと研究室のもので間に合った。次年度には,この予算により,出張中での使用のためのノートパソコン用のMathematicaを購入する予定でいる。成果発表,研究分担者や連携研究者との研究連絡などのための自己の旅費,2名の博士後期課程大学院生の学会や研究会参加のための旅費としても使用する。
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