研究課題/領域番号 |
23540292
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小池 裕司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60262458)
|
研究分担者 |
田中 和廣 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70263671)
|
キーワード | 摂動QCD / シングルスピン非対称 / 核子構造 |
研究概要 |
前年度に引き続き,シングルスピン非対称に関する研究を行った。シングルスピン非対称は,パートン模型には含まれない,核子やハドロン中のパートン間多体相関の結果として表れる特異な現象である。この相関は,核子中の「クォーク・グルーオン相関関数」と「3グルーオン相関関数」,及び終状態中間子の「ツイスト3破砕関数」として表現される。クォークグルーオン相関については,以前の研究で得られていた関数を基に,核子ー核子衝突におけるジェット生成及び直接光子生成過程について,RHICのエネルギーでのシングルスピン非対称の評価を行った。いずれの過程でも,偏極核子の前方で20-30%の非対称が引き起こされること,ジェットについてはπ中間子と似た振る舞いであること,直接光子についてはジェットと異なる特異な振る舞いであることなどを明らかにした。3グルーオン相関については,電子ー核子衝突におけるD中間子生成過程に対し,米国で企画されているEIC実験に備え数値的評価を行った。核子核子衝突におけるD中間子生成から得られている3グルーオン相関関数に対する上限を基に評価した。また,核子核子衝突における軽いハドロン生成過程についても断面積の解析公式を導出し,かつ数値計算も行いそのインパクトを調べた。D中間子生成から得られた3グルーオン相関の上限値を用いると,軽いハドロン生成には実験と比較しやや大きすぎる寄与をしてしまうことが明らかになった。ツイスト3破砕関数の寄与については、他の2つと異なり「非ポール」の寄与として現れるため、その定式化が困難であったが、今年度の研究により計算手法が理解できた。ファインマン図形の数が少なく、比較的計算が簡単な電子ー核子衝突過程を例に定式化を完成させ断面積を導出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子ー核子及び核子ー核子衝突におけるシングルスピン非対称(SSA)の系統的研究が本研究の目的であるが、今年度の研究では、SSAに寄与する「クォークグルーオン相関」と「3グルーオン相関」については、解析公式は完成し数値的評価もある程度進行した。これまで全く不明であった「ツイスト3破砕関数」についても、定式化が完成し、様々な過程への寄与について解析公式を導出できる段階になっている。このように重大な成果は上がっているが、論文執筆が追いついていないため上記のように評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度確立したツイスト3破砕関数に関する定式化を、核子ー核子衝突における中間子生成のSSAに適用し解析公式を導出する。これにより、既に求められているクォークグルーオン相関および3グルーオン相関の寄与と合わせ、この過程のSSAに対する完全な解析公式となる。次に、これを基にRHICで得られているπ、K、η中間子のSSAデータの解析を電子ー核子衝突におけるSSAの解析とコンシステントに行う。 D中間子やJ/ψのようなチャームクォークを含む中間子のSSAは3グルーオン相関によって引き起こされるため、横偏極核子中の3グルーオン相関を決めるのに重要な過程である。既に求められているD中間子に加え、核子ー核子衝突や電子ー核子衝突におけるJ/ψ生成のSSAに関する解析公式を導出し、RHICやEIC実験に備える。RHICでは、近い将来,D中間子やJ/ψ生成に関しデータが報告される予定なので、その解析を通じて3グルーオン相関関数に関する情報を引き出す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
国際学会、物理学会などでの研究発表や研究分担者との研究連絡のための旅費として使用する。また、出張先でのインターネットや文献・書籍の整理のためI-padを購入する予定でいる。
|