研究課題/領域番号 |
23540293
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大原 謙一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00183765)
|
研究分担者 |
高橋 弘毅 山梨英和大学, 人間文化学部, 准教授 (40419693)
|
キーワード | 国際情報交換 / 重力波 / データ解析 |
研究概要 |
Hilbert-Huang Transform (HHT) を用いた重力波のデータ解析では,Empirical Mode Decomposition (EMD) や Ensemble EMD (EEMD) の計算の際に使用するいくつかのパラメータを決定しなければならない。そこで,サイン・ガウス波形のデータとガウス的ホワイト・ノイズを用いて,最適パラメータの決定を試みた。ここでは,サイン・ガウス波形の周波数が一定の場合と時間的に線形に変化する波形(いわゆるチャープ信号)を用いた。特に,HHT解析により計算された瞬時周波数(instantaneous frequency IF)について,線形関数および2次関数でのフィッティングを行い,EMDやEEMDのパラメータをいろいろと変えた場合に,どの程度の精度で注入した信号の周波数を再現できるかを調べた。また,用いるパラメータごとの計算に必要なCPU時間も加味して,データ解析で最適なパラメータを見いだすことができた。 また,前年度から行っている,HHTを用いた重力波捕捉のalert system構築について,新たに,Reciever Operating Characteristics (ROC) 曲線を用いた検出効率の検証を行った。その結果,十分効率的にalert systemを構築できる可能性を見いだしたが,さらなる統計的な解析が必要である。 さらに,連星中性子星の合体の際に放射される重力波について,数値相対論の結果得られた波形データとTAMAなど実際のノイズデータを用いて,波形解析,特に連星中性子星の合体フェーズとリングダウン・フェーズのIFの時間変化を捉える精度の解析に着手し始めた。現段階で,ある程度精度良くIFを捕捉できることが判明してきたが,さらに詳細な考察が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EMD, EEMDのパラメータ決定の研究は,おおむね予定どおり完了し,学会や国際研究集会などで成果発表を行った。また,これまでの研究成果をまとめた論文を現在投稿中である。 alert system構築に関する研究も,現時点までの研究成果をとりまとめて論文作成の準備中である。 さらに,数値相対論のデータを用いたデータ解析は,数値相対論に関する研究グループなどとの議論を通じて新たに見いだした研究手法であり,本研究のさらなる広がりが期待できるものである。 以上のことから,おおむね順調に進展しているものと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
alert system構築に関して,統計的な議論を追加して,最終的な成果を発表する。特に,ROC曲線や周波数-振幅を用いて,大きなノイズを含む観測データの中に重力波が含まれる可能性の有無をどの程度まで絞り込むことができるかを議論する。必要に応じて,HHTと他の解析手法を組み合わせた,2段階,3段階のalert systemの構築を考察する。 また,中性子星やブラックホールのコンパクト星の連星合体の際の重力波について,数値相対論により得られたデータを用いて,時間-周波数や時間-振幅の解析におけるHHTの有効性について議論し,実際に重力波が観測された際に重力波源の物理的性質を明らかにしていく方法を追求する。その際に,数値相対論の研究で世界をリードしている京都グループなどとの連携を進める。 HHTを用いたバースト的シグナルを含む重力波データ解析の最終的なとりまとめとして,実際の重力波観測装置のノイズ・データを用い,また,HHT以外の,短時間フーリエ変換やwavelet変換を用いたバースト重力波のデータ解析との比較も行う。さらに,HHTと同様にadpaptiveな信号解析手法である,sparse time-frequency representation を用いたデータ解析への発展についても議論する。 なお,本研究の成果について,本年12月にインドで開催されるGWPAW2013などにおいて発表する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
共同研究者である米国 NASA の Jordan B. Camp氏たちとの情報交換,共同研究のために渡米して議論することを予定していたが,先方の都合で,電子メールやネットワークを通じた議論だけとなった。そのため,改めて,本年度に渡米することを予定している。
|