研究課題/領域番号 |
23540296
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野尻 伸一 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00432229)
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キーワード | 暗黒エネルギー / インフレーション / シンメトロン / 質量を持つ重力 / 臨界重力理論 |
研究概要 |
インフレーションと暗黒エネルギーを統一的に扱うことのできる現実的な模型の構築を目指し、インフラトンと似たようなスカラー場 を導入したガリレオンと呼ばれる模型、シンメトロンと呼ばれるスクリーニングを起こす模型、また、アインシュタイン重力を拡張した F(R) 重力理論、質量を持つ重力子の模型、質量を持つスピン2の場を含む重力理論等の研 究を行なった。これらの成果は論文にまとめられるとともに、国際学会の招待講演等で発表している。 ガリレオンやシンメトロンの模型はスカラー場を含むために重力のニュートン則に補正を与える。シンメトロンの模型では物質密度の大きいところでは物質とスカラー場の結合が小さくなりニュートン則への補正を観測と矛盾がない程度に小さくすることができる。ところが、シンメトロンだけでは現在の宇宙の加速膨張を引き起こすことができないことが分かった。そこでこのシンメトロンの模型と、F(R) 重力理論の中で今まで観測等から棄却されていた模型を組み合わせることにより、宇宙の加速膨張を引き起こすとともに、観測と矛盾のない模型を構築した。この成果は論文にまとめ投稿中である。 質量を持つスピン2の場を含む重力理論では通常の計量テンソル同様の2階対称テンソル場が二つ含まれる。この理論の F(R) 重力理論に相当する拡張を行い、任意の宇宙膨張の発展を再現する模型をどのように構成すればいいかを明らかにした。この成果は論文として学術雑誌に掲載されるとともに国際会議で招待講演を行った。現在これらの模型を観測等でどのように検証すればいいかを検討している。 また、これらの重力理論の背後にある理論をさぐるため、臨界重力理論と呼ばれるくりこみ可能な簡素化された模型の研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の目的は主に次の3つである: 1. 宇宙初期のインフレーション、約50 億年前から始まった宇宙の加速膨張や暗黒物質を説明する模型が存在するかを系統的に調べ るとともに、顕にそのような模型の構築を行う。2. そのような模型が、現在の宇宙の大規模構造をもたらす物質の揺らぎの成長等を 様々な観測や実験と矛盾がなく説明できるか確かめるとともに、これらの模型のするとともに、系統的に調べるとともに、実験・観測 による検証の可能性を検討する。3. 超弦理論に基づく重力理論的立場と、より現象論的な素粒子論の立場の両方から、模型の考察を 行い、宇宙論から素粒子論へ明確なフィードバックを与える。 1. についてはシンメトロンや質量を持つスピン2の場を含む重力の理論が最近になって提案されたため、これらの模型で現実的な模型が構成できるかを検証し、ある程度の成果をあげることができた。 2. 昨年度からの F(R) 重力理論で密度ゆらぎの計算をほぼ完成させ、ゆらぎが振動するモードが成長する条件が明らかになった。また、スピン2の場を含む重力の理論でのゆらぎの研究に着手している。 3. 超弦理論に動機づけられた量子重力理論の模型の構築を行い、臨界重力理論というくりこみ可能な簡素化された模型の研究を行うと共に、これらの模型と、宇宙論の模型との関係を 考察している。 以上のように目的の7割程度は達成され残りの内2割程度も達成のめどがついている。
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今後の研究の推進方策 |
このところ急速に研究が進展した質量を持つスピン2の場を含む重力理論の模型についてインフレーション、暗黒エネルギー、及び暗黒物質の問題を統一的に解決する模型を構築できるかを調べる。 特に、これらの模型に非常に特徴的な、ゆらぎが振動するモードについて、現実 的と呼ばれる様々な模型に適応し、これまでの観測と矛盾がないかを検証するとともに、観測により将来検証する可能性を具体的に調 べる。また、この模型やその他の宇宙論的に動機付けられた模型に対し、超弦理論などの高次元の重力理論との関係を考察し、宇宙論的な模型の素粒子論としての起源や関係について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に当面必要なコンピュータは購入し、順調に成果を出し始めているので、研究費は主に、共同研究者のいる外国の研究グループを 訪れるとともに、国内外から研究者を招き、情報の提供をお願いするとともに、議論を行うために使用する。
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