研究課題/領域番号 |
23540301
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
一瀬 郁夫 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20159841)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 極低温原子系 / 量子多体現象 / モンテ・カルロ数値計算 / 格子場の理論 / 強相関 / ゲージ理論 |
研究概要 |
本年度の研究実績としてまず、極低温原子系に関する解析的および数値実験による研究成果が挙げられる。レーザーにより光学格子を形成し、その格子に原子を捕獲した量子多体系は、多くの実験設定が制御可能であり、また不純物等の効果も無く、量子多体系の性質を調べる上で理想的な系である。本研究においてはこの光学格子に2成分ボソン原子(具体的には超微細構造を持つ原子や、同位体)を捕獲させ、原子間斥力が大きい極限の相構造と臨界現象を主に数値計算的手法を用いて研究した。この系は高温超伝導体の研究と密接に関連していることは明らかであり、得られた知見は強相関物性系の理解に大きな寄与を与えることが期待される。有効モデル(Gintzburg-Landau 理論)として、2成分を表すスレーブ・ボソン変数と超流動現象を記述するボソン場を用意し、格子上でbosonic t-J modelを構築した。数値実験によりそのモデルの相構造を調べ、種々の相の存在と相転移次数、臨界指数等を明らかにした。特に2成分原子が互い違いに詰まる反強磁性的状態(古典的状態)と各サイトごとに2つの原子が重ね合わさった状態が実現する量子状態が実現することを見いだし、さらに古典的・反強磁性的状態にホールをドープしていくと、超流動状態に転移し、転移の次数は1次であること見いだした。 もう一つの成果として強磁性超伝導現象に関する研究が挙げられる。本来超伝導現象と磁性は相容れないものであると信じられてきたが、近年ウラン化合物の中にこの物性を併せ持つものが見いだされた。本研究においてこれらの現象を記述する格子Gintzburg-Landau 理論を提案し、その相構造を数値実験による調べ、実験事実を良く記述することを示した。今後の更なる発展が期待される分野である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の「研究実績の概要」に記したように、当初目的としていた場の量子論の数値計算的手法を用いて量子多体系の物性現象の解明を行うことが、興味深い物性多体系である光学格子上の2成分極低温原子系と強磁性超伝導現象に関して達成できている。これらの研究成果は学術雑誌や国際会議、学会発表として公表されている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究を引き継ぎ、実験で得られている物理的結果の理解や数値計算技術の開発も含めて研究を推進する計画である。特に数値計算手法において、これまではボソン系のモデルをモンテ・カルロ法を用いて調べて来たが、今後はフェルミオン系の経路積分法を取り入れて、フェルミオン系(高温超伝導現象などの電子系)について研究を行う準備が進められている。平成23年度内に発売予定であった最新型計算機がようやく24年5月に発売になったので、その最新機種を購入し、その計算機の購入に合わせて並列計算も含めた計算手法の開拓を行い、計算速度の高速化の結果により、大きな系での信頼度の高い計算結果を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
数値計算の高速化が必要不可欠であるので、その対策として1.最新のワークステーションの購入2.計算プログラムの高速化の推進が、挙げられる。これらはいずれも急務である。また他大学の連携研究者との研究打ち合わせや得られた結果の公表のための旅費、論文投稿料、専門知識・専門技術の提供等に対する謝金が必要である。
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