研究課題/領域番号 |
23540305
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 卓史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80155837)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / ガンマ線 / バースト / 火の玉 |
研究概要 |
米徳関係式に関しては、応募時までにそれがGRBの観測データの性質に依存しないかどうかを調べた結果、観測fluxに対する依存性や赤方偏移による進化効果は少ないことが判っていた。しかし、それでも光度の対数にして0.33程度のsystematic errorが存在した。そこで、より精度の良い関係式を得るためいくつかの改善を行った。(1)cut off power law ではなくBandスペクトルのみのデータに絞る。(2)peak luminosity(Lp)を求めるのに観測者系ではなく、GRBの固有系で同じ時間あたりの値に統一する。(3)peak energy(Ep)が10%以下の精度の良いデータに絞る。(4)Luminosity Time(TL=Eiso/Lp)と言う新しい変数も関係式に考慮に入れる。(5)例外のない法則はないと言われるが、いわゆるoutlierを恣意的ではなく系統的に取り除く方法をRobust統計をもとに確立した。以上のような改善をした結果、reduced kai が12.16/9なる精度の良い関係式Lp=10**52.5*(Ep/10**2.65keV)**1.9*(TL/10**0.95)**(-0.12)を得た。 次にさらなる米徳関係式の改善を進めた。そのためにADCL(Absolute Deviation from Constant Luminosity)と言う新しいGRBのparameterを提案した。これは、時間変動の激しいGRBに対して積算光度を考え、それが一定の光度から大きく離れているかどうかという事を表わすものである。その結果ADCLが0.17より大きいか小さいかでセファイド変光星のように2つの米徳関係式が得られそうだということを発見した。またこれらはそれぞれreduced kaiが11/14, 7.6/9という大変精度の良い関係式である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米徳関係式を理論的に説明するのが本研究の最終目標である。したがってそのためには米徳関係式がsystematic error の大きい単なる相関式ではなく、統計的な誤差程度しかないまさに関係式になる必要がある。本年導入したADCLという物理量でそれがほぼ実現した。その結果米徳関係式がADCLの大小によって2つあるらしいという事が判明した。これはセファイド変光星の場合を彷彿させる。その由来の理論的な理解が新しい問題として現れた。このような進行状況から上の自己評価を下した。
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今後の研究の推進方策 |
ADCLを導入して、面白い結果が得られそうであるが、その物理的な意味を追求するのが大きな課題である。1つはそれが運動学的なものである可能性である。実はEpを求めるにはバーストの全時間のデータを使っている。したがってADCLの小さなものは精度が良いことが期待される。 GRBには継続時間の短いSGRBがある。これに対しては継続時間の長いLGRBと同様な米徳関係式が成り立っているのではないかと言われてきたが、そのreduced kaiがいくらであるかというような議論はなされてこなかった。その理由は赤方変移の決まったSGRBの数が少なかったためである。しかし、最近かなり数が増えて来たので正確な関係式を求める時期になったと言える。LGRBには2つの米徳関係式がありそうだがSGRBはこれと一致するのかどうかが興味深い。 LGRBの精度の良い米徳関係式が得られたのそれを使った宇宙論パラメターを決めることも追及して見たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度と同様な支出を予定している。具体的には研究連絡、情報収集のための旅費、パソコン関係の物品費、書籍の購入等である。
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