研究課題
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基づいて、クォークの閉じ込め、カイラル対称性の自発的破れ、及び、クォーク・ハドロンの諸性質に関する重要で独自性の高い研究を行った。①強い相互作用の第一原理計算であるSU(3)カラーの格子QCDを用いて、クォーク閉じ込めに対するアーベリアン・ドミナンスの定量的な研究を行った。ここで閉じ込め現象とQCDの非可換性との対応は長年の未解決な課題である。我々は、最大可換ゲージにおいて非対角グルーオン成分を取り除く“アーベリアン射影”を行い、クォーク間ポテンシャルのアーベル部分を高精度で計算した。その結果、クォーク閉じ込め力がグルーオンの可換部分のみでほぼ完全に再現されることを世界で初めて示し、この現象を閉じ込めに対する“perfect Abelian dominance”と名づけた。②クォーク閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れとの対応関係も長年の未解決課題の1つである。我々は、閉じ込めの秩序パラメータである“ポリヤコフ・ループ”とカイラル対称性の自発的破れと直接関連する“ディラック演算子の固有モード”との関係を世界で初めて解析的に導出した。この解析的な関係式に基づき、カイラル対称性の自発的破れの本質的な要素である低ディラック・モードの寄与が、閉じ込め現象に対しては小さいことを解析的に示し、また、格子QCDを用いても その事実を数値的に確認した。この結果は、QCDにおいて“カイラル対称性の自発的破れ”と“クォークの閉じ込め”とが1対1には対応しない事を示すものである。③QCDに対するシュウィンガー・ダイソン方程式を定式化し数値的に解くことにより、クォークのスカラー荷、軸性ベクトル荷、擬スカラー荷などの非摂動的計算を行った。上記いずれの研究についても国際的な一流学術誌に原著査読論文として今年度発表済みであり、①については 国際会議において招待講演を行った。
researchmapと個人のwebページに、発表論文、及び、国際会議や日本物理学会での招待講演などの研究成果を記載している。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
Proceedings of XIth International Conference on “Quark Confinement and the Hadron Spectrum” (Confinement XI)
巻: Confinement XI ページ: 1-7
巻: Confinement XI ページ: 1-12
Physical Review D
巻: 90 ページ: 111501(R)-1-6
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevD.90.111501
巻: 90 ページ: 094505-1-15
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevD.90.094505
巻: 89 ページ: 074017 -1-28
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevD.89.074017
European Physical Journal Web of Conferences
巻: 71 ページ: 00129-1-8
http://dx.doi.org/10.1051/epjconf/20147100129
http://researchmap.jp/read0069370
http://homepage3.nifty.com/suganuma-kyoto/hideo/