研究課題
最終年度は宇宙線が銀河・銀河団で果たす役割について、さまざまな天体について観測と比較しつつ理論モデルを構築した。1.すざく衛星の観測により、銀河団の外周部のエントロピーは、従来の理論予想より小さいことが最近明らかになった。私はこの現象が、銀河団周辺部で発生した衝撃波により加速された宇宙線が、ガスの運動エネルギーを消費した結果であることを指摘した。2.銀河団中心部では活動銀河核 (AGN) によって、膨大な熱が銀河団ガスに供給されていると考えられているが、その熱の運び役として宇宙線が働いてる可能性を指摘し、実際に安定に熱を供給できることを摂動理論を使って示した。また、Hydra A 銀河団の中心にある cD 銀河をすばる望遠鏡で観測し、巨大な冷たいガスの円盤が存在することを明らかにした。このガスの一部はブラックホールに落下し、宇宙線ジェットとして噴出していると考えられる。3.銀河系の中心部にはフェルミバブルという巨大なガンマ線の構造が見られるが、ガンマ線を放射している宇宙線の起源がよくわかっていない。この問題について、宇宙線が超新星残骸と同じように、バブル周囲の衝撃波で加速されたとすると、観測をよく説明できることを示した。4.散開星団 RSGC1 のガンマ線は陽子宇宙線ではなく電子宇宙線によるものである。電子宇宙線はパルサーにより、供給されている。研究期間全体では、宇宙線が ~pc の銀河系内天体スケールから ~Mpc の銀河団スケールまで、様々な階層で果たしている役割について明らかにすることができた。特に、銀河団スケールでの宇宙線の役割は、これまで予想されていたもの以上であることがわかった。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件)
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