研究概要 |
連星合体重力波探査のノイズ選別方法開発のためには検出器ノイズの統計的性質の詳細な理解が必要であるために,TAMA300検出器データのノイズの統計性について調べ,非ガウス性や頻繁に発生するグリッジ,飽和した異常なデータの存在などを確認した.それらの一部は従来は知られていなかったノイズである.次に主要なノイズ選別方法であるカイ2乗テストについて,周波数領域でデータを分割する方法について異なる2つの方法について調べた.その2つは,(1)ノイズパワースペクトラムの積分値が等しくなるように分ける方法,(2)ノイズパワースペクトラムの逆数の積分値が等しくなるように分ける方法,である.その結果,(1)では良いノイズ選別ができず,(2)は従来の方法と同等のノイズ選別が可能である事が分かった. 連星合体インスパイラル波形の高次の変調モードが合体する中性子星・ブラックホール連星のパラメータ決定精度に与える影響について,複数の地上重力波検出器によってコヒーレント解析を行う場合について調べた。この研究の最も困難な点は,Fisher行列の精度を確保する点にあり,本年度はFisher行列の計算精度の確認,向上を行なった。以上の2つの研究はA.Pai, K.G.Arunらとの共同研究で行なった。 ブラックホール周りの星の軌道進化の計算のための第一歩として,シュバルツシルドブラックホール周りに円状の回転リングがある 場合の重力場を,Teukolsky方程式とCCK形式と呼ばれる方法によって計算を行なった.前年度までの調和関数モードのLが2以上の計算に加えて,L=0,1の低次のモードについての計算を行った。そして回転リング周りの重力場に,リング半径の位置で不連続性が発生し,低次モードを取り入れてもそれが解消されない事が分かった。現在までの考察では,この原因はゲージ条件にあると考えられる.
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次年度の研究費の使用計画 |
国内の学会研究会や,研究打ち合わせのための国内旅費や,海外での国際会議出席などのための外国旅費を使用する.数値的計算,Matlab,Maple,Mathematicaでの計算,論文作成,学会研究会発表でのプレゼンテーションを行なうためのコンピュータやその関連機器,データ保存 用のDVD,ソフトウエアなどを購入する.また,研究資料として必要な書籍を購入する.論文を投稿する際には投稿料にも使用する.
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