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2012 年度 実施状況報告書

重力波のデータ解析法とブラックホール摂動論の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23540309
研究機関大阪大学

研究代表者

田越 秀行  大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30311765)

キーワード宇宙物理学 / 一般相対論 / 重力波 / 重力理論 / データ解析 / ブラックホール
研究概要

連星合体重力波探査のノイズ選別方法開発のためには検出器ノイズの統計的性質の詳細な理解が必要であるために,TAMA300検出器データのノイズの統計性について調べ,非ガウス性や頻繁に発生するグリッジ,飽和した異常なデータの存在などを確認した.それらの一部は従来は知られていなかったノイズである.次に主要なノイズ選別方法であるカイ2乗テストについて,周波数領域でデータを分割する方法について異なる2つの方法について調べた.その2つは,(1)ノイズパワースペクトラムの積分値が等しくなるように分ける方法,(2)ノイズパワースペクトラムの逆数の積分値が等しくなるように分ける方法,である.その結果,(1)では良いノイズ選別ができず,(2)は従来の方法と同等のノイズ選別が可能である事が分かった.
連星合体インスパイラル波形の高次の変調モードが合体する中性子星・ブラックホール連星のパラメータ決定精度に与える影響について,複数の地上重力波検出器によってコヒーレント解析を行う場合について調べた。この研究の最も困難な点は,Fisher行列の精度を確保する点にあり,本年度はFisher行列の計算精度の確認,向上を行なった。以上の2つの研究はA.Pai, K.G.Arunらとの共同研究で行なった。
ブラックホール周りの星の軌道進化の計算のための第一歩として,シュバルツシルドブラックホール周りに円状の回転リングがある 場合の重力場を,Teukolsky方程式とCCK形式と呼ばれる方法によって計算を行なった.前年度までの調和関数モードのLが2以上の計算に加えて,L=0,1の低次のモードについての計算を行った。そして回転リング周りの重力場に,リング半径の位置で不連続性が発生し,低次モードを取り入れてもそれが解消されない事が分かった。現在までの考察では,この原因はゲージ条件にあると考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コンパクト連星合体解析の非定常ノイズ除去方法のためのカイ2乗の方法の改良は,考案した2つの方法では従来の方法に比べてあまり向上しないことが判明した。従って,新たな別の方法を考案する必要が生じている。
ただ,TAMAデータの統計性について詳細に評価する中で,TAMAデータについて従来知られていなかった飽和した異常なデータの存在が明らかになるなどの進展はあった。
また,高次変調モードを取り入れた連星合体波形のFisher行列計算は,当初の研究計画には無かったものであるが,これまでになされていない研究課題であり重要性が高いと判断し,研究に取り組むことにしたものである。
ブラックホール摂動法による回転リングの重力場計算は,当初はすぐにできるものと考えていたが,重力場の不連続性という問題が予想以上に難しい問題である事が判明して,当初の予定より進捗は遅れている。

今後の研究の推進方策

コンパクト連星合体解析の非定常ノイズ除去方法として,今後更に新しい方法を考案して,シミュレーションなどで有効性を確認,実証していく。
高次変調モードを取り入れた連星合体波形のFisher行列計算の数値計算結果の精度の検証作業を早急に終わらせて,広いパラメータ領域での決定精度の評価を行っていく.
ブラックホール摂動法による回転リングの重力場計算は,完全な解決は難しいと考えられるので,現在までに判明した事を論文としてまとめていく.

次年度の研究費の使用計画

国内の学会研究会や,研究打ち合わせのための国内旅費や,海外での国際会議出席などのための外国旅費を使用する.数値的計算,Matlab,Maple,Mathematicaでの計算,論文作成,学会研究会発表でのプレゼンテーションを行なうためのコンピュータやその関連機器,データ保存 用のDVD,ソフトウエアなどを購入する.また,研究資料として必要な書籍を購入する.論文を投稿する際には投稿料にも使用する.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Impact of the second-order self-forces on the dephasing of the gravitational waves from quasicircular extreme mass-ratio inspirals2013

    • 著者名/発表者名
      Soichiro Isoyama, Ryuichi Fujita, Norichika Sago, Hideyuki Tagoshi, Takahiro Tanaka
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 87 ページ: 024010

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.87.024010

    • 査読あり
  • [学会発表] Search for gravitational wave events with KAGRA and the world-wide network of laser interferometers in the advanced detector era2012

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Tagoshi
    • 学会等名
      RESCEU SYMPOSIUM ON GENERAL RELATIVITY AND GRAVITATION
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      20121112-20121116
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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