研究課題/領域番号 |
23540309
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田越 秀行 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30311765)
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キーワード | 宇宙物理学 / 一般相対論 / 重力波 / レーザー干渉計 / ガンマ線バースト / 中性子星 / ブラックホール |
研究概要 |
レーザー干渉計重力波検出器の主要なターゲットである連星合体インスパイラルを検出するための波形モデルにおける,振幅と位相の高次の変調モードが合体する中性子星・ブラックホール連星のパラメータ決定精度に与える影響について調べた。複数の地上重力波検出器によってコヒーレント解析を行う場合について計算した。Fisher行列の精度向上を行い,ソースの天球面上の位置や,連星の軌道面傾斜角の様々な場合について,乱数によりシミュレーションを行った.その結果,高次変調モードは,軌道面傾斜角決定精度の向上に最も有効に働くことが分かった. また,ショートガンマ線バーストに付随する連星合体重力波が検出できた場合に,電磁波観測による天球面上の位置と距離の情報が,軌道面傾斜角の決定精度向上にどの程度影響するかを調べた.その結果,KAGRAを含む4台の検出器では軌道面傾斜角は,中性子星ブラックホール連星の場合で2.7度の精度,中性子星連星の場合で6.4度の精度(いずれもシミュレーション結果の中心値)で決定できることが分かった.この重力波による軌道面傾斜角とショートガンマ線バーストの電磁波観測の情報をあわせれば,ガンマ線バーストジェットの性質を調べることが出来ると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高次変調モードを取り入れた連星合体波形のFisher行列計算は,インドの研究者達との共同研究で行っており,計算結果の相互確認などで見込み以上の時間がかかったため,論文完成が遅くなった. ブラックホール摂動法による回転リングの重力場計算は,当初はすぐにできるものと考えていたが,重力場の不連続性という問題が予 想以上に難しい問題である事が判明して,当初の予定より進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
高次変調モードを取り入れた連星合体波形のパラメータ推定誤差についての結果をまとめた論文2本は完成し,2014年3月末にPhysical Review Dに投稿済みである.原稿の修正作業は残っているが,2014年度中には終了する見込みである. ブラックホール摂動法による回転リングの重力場については,結果は一通りまとまっており,現在論文を執筆中であり,これも2014年度中には終了する見込みである.
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次年度の研究費の使用計画 |
高次変調モードを取り入れた連星合体重力波波形のパラメータ決定精度に関する論文は投稿済みであるが,最終的に受理され出版されるのは2014年度になる見込みである.また,ブラックホール時空内の回転リングによる重力場構築論文が現在執筆中であり完成は2014年度になる.以上の理由により次年度使用額が生じた. 研究成果発表のための学会研究会旅費,計算結果データ保存のためのハードディスクなどに使用する.
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