研究実績の概要 |
データ解析: レーザー干渉計重力波検出器の主要なターゲットである連星合体インスパイラルを検出するための波形モデルにおける,振幅と位相の高次の変調モードが合体する中性子星・ブラックホール連星のパラメータ決定精度に与える影響について調べた。複数の地上重力波検出器によってコヒーレント解析を行う場合について計算した。ソースの天球面上の位置や,連星の軌道面傾斜角の様々な場合について,乱数によりシミュレーションを行った.その結果,高次変調モードは,軌道面傾斜角決定精度の向上に最も有効に働くことが分かった.また,ショートガンマ線バーストに付随する連星合体重力波が検出できた場合に,電磁波観測による天球面上の位置と距離の情報が,軌道面傾斜角の決定精度向上にどの程度影響するかを調べた.その結果,KAGRAを含む4台の検出器では軌道面傾斜角は,中性子星ブラックホール連星の場合で2.7度の精度,中性子星連星の場合で6.4度の精度(いずれもシミュレーション結果の中心値)で決定できることが分かった. ブラックホール摂動論: シュバルツシルド,及びカーブラックホール周りに円状の回転リングがある場合の重力場を,Teukolsky方程式とCCK形式と呼ばれる方法によって計算を行った.この計算においては,回転リング周りの重力場に,リング半径の位置で非物理的な不連続性が発生するという問題がある.我々はこの問題に対して,低次の調和モードの加え方を工夫することにより,リング半径の外側の赤道面上での不連続性を許すことにより,リング半径での不連続性は取り除けることが分かった.これは別の研究でされていた静止粒子を置いた場合の結果と非常に似た結果である.本研究はCCK形式で摂動重力場を具体的に計算した数少ない研究例の1つである.
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