研究課題/領域番号 |
23540311
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
津江 保彦 高知大学, 自然科学系, 教授 (10253337)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | QCD物性 / 極限環境 / クォーク・ハドロン / 相転移 / グルオン多体系 |
研究概要 |
強い相互作用により支配されるクォーク・グルオン、及びハドロン多体系が、高温、高密度、高磁場など、多重にわたる極限環境下におかれた際に実現される真空構造、その上での粒子励起モードや相構造・相転移、及びこれらの多粒子系が各相で示す物性を解明することを本研究課題の主目的としている。平成23年度は、1.対相互作用するクォーク模型としてボン・クォーク模型を取り上げ、ハドロン相とカラー超伝導相間の相転移を調べた。ボソン写像の方法を援用してボソン表現を用いてこのモデルの厳密解を構成することに成功しているので、クォーク3体状態としてのハドロン相と、クォーク2体状態としてのカラー超伝導相の相構造・相転移を、対相互作用と粒子・空孔対相互作用の比、及び粒子数の関数として量子臨界現象の一部と見なして議論し、相図を描いた。これらの成果を3編の学術論文として公表した。さらに、2.ベクトル・スカラー8点相互作用まで考慮した拡張された南部・Jona-Lasinioモデルを基礎に、有限温度・密度クォーク・ハドロン相転移に関する研究を遂行し、核物質相とクォーク相の圧力を計算・比較することにより、温度・化学ポテンシァル相図中でクォーク・ハドロン相転移の1次相転移線を与える研究を行っているところである。低温度では密度を上げていくと、カイラル相転移の後にクォーク・ハドロン相転移が起きる兆候を得ている。他に、3.グルオンのみに注目し、グルオンの束縛状態としてのグルーボールが有限温度環境下でその性質を如何に変えるかの研究として、まずは真空中でのグルーボールをQCDハミルトニアンから記述する方法を与えた。真空中で得られたこの研究成果の公表準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に研究を計画していたベクトル・スカラー8点相互作用まで考慮した拡張された南部・Jona-Lasinioモデルでの有限温度・密度クォーク・ハドロン相転移に関する研究は、学術論文としては未出版であるが学会等で成果を報告し、学術論文として公表する前の段階に来ている。加えて、平成24年度に計画していたグルオン多粒子系の物性と励起モードの研究に関して、真空中ではあるがグルオン束縛状態としてのグルーボールの記述法を与えることに成功し、成果を学術論文として投稿中であり、研究計画を先取りして進展している。また、平成24年度に計画していた非一様カイラル凝縮体と励起モードの研究についても平成23年度中に予備的研究を開始しており、当初の研究計画以上に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度中に、真空中でグルーボールを記述することが可能であることを研究計画を先取りして明らかにできたので、この方法を用いて多重極限環境下でのグルーボールの性質を理解することを当初の計画通り予定している。特に有限温度下でグルーボールの性質がどのように変化するか、グルーボール多体系の物性、グルーボールがクォーク・グルオン、またはハドロン多体系に及ぼす効果を検討していく。また、2000年に、非一様なカイラル凝縮体が、高エネルギー重イオン衝突後の準安定状態として存在できることを示す先駆的な研究を行っているので、この準安定な真空の上でのメソン励起を研究する。すなわち、非一様カイラル凝縮体の存在可能性と共に、可能な励起モードとその性質を分析することを計画している
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行について、4月に支払いすべき経費が残っているため、次年度使用額が存在するように見えるが、実際には、全額を執行予定である。そのため、次年度の研究は、当初の計画通り進める予定である。
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