研究課題/領域番号 |
23540312
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
船久保 公一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60221553)
|
キーワード | 電弱相転移 / 有限温度有効ポテンシャル / ボルツマン方程式 / レプトン数生成 / バリオン数生成 |
研究概要 |
1. 電弱スケール程度の温度であった初期宇宙で非平衡状態を実現すると考えられる相転移についての研究を進めた。電弱相転移を高精度で調べるには有効ポテンシャルの2ループ補正を考慮した解析が不可欠である。特に温度補正を正確に取入れるために温度依存質量の再和法を考慮したベクトル場の2ループ補正を、高温展開を使わずに評価する方法を提唱し、可換ゲージ・ヒッグス模型で実際に計算を行い、先行研究との比較検討を行った。 2. 初期宇宙の非平衡現象を取扱う方法としてBoltzmann方程式が用いられるが、殆どの研究では分布関数の運動量依存性が平衡分布のそれに比例することを仮定して解析されてきた。重いニュートリノの崩壊による熱的レプトン数生成のシナリオにおいて、この仮定の正当性を確認するために、運動量依存性を考慮したBoltzmann方程式を解析した。特にレプトン数を2、及び、1だけ変える散乱過程を考慮した場合の数値解を求め、それぞれの効果を評価した。ニュートリノのDirac型湯川結合とハッブルパラメータの比によって系の非平衡性が特徴つけられるが、そのパラメータが小さく非平衡性が大きい場合に上記の仮定が正当ではなく、生成されるレプトン数に有意の差が生じることを確認した。さらにトップ・クォークを含む散乱過程は重いニュートリノの分布関数の時間発展に大きな影響を及ぼし、非平衡性を弱める効果があることを発見した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電弱スケールでの非平衡現象の実現可能性の探求のための相転移の研究は、新しい解析法を提案し論文(Phys. Rev. D)として発表できた。また、従来のBoltzmann方程式による非平衡現象の解析法を発展させ、運動量依存性の効果の研究ができるようになった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した相転移の解析法を非可換ゲージ理論に拡張する。特にゲージ場の取扱いは、高温展開に依存しない再和法を系統的に転換する。 Boltzmann方程式を用いた非平衡現象の研究を、次のステージに進めるために、閉時間形式を用いた非平衡グリーン函数の方法をレプトン数生成の解析に適用し、これまで得られた結果との比較を行うことで、off-shell効果の大きさを評価する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
これまでと同様、共同研究者との研究連絡のための旅費に使用する。また、数値計算のデータが蓄積されるのでその整理のためにデータ・ストレージ環境を整備し、必要なソフトウェアを購入する。
|