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2013 年度 実施状況報告書

高次元ブラックホールの対称性

研究課題

研究課題/領域番号 23540317
研究機関大阪市立大学

研究代表者

安井 幸則  大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30191117)

キーワードブラックホール / キリング矢野テンソル / 数理物理学
研究概要

高次元ブラックホール時空には, 共形Killing-矢野テンソル(CKYテンソル)と呼ばれる特別なテンソル場で記述される“隠れた対称性”が存在する. このような対称性は, ブラックホール時空の分類問題や時空の(不)安定性解析の研究においても重要な役割を果たすと考えられている. 歴史的には, Walker-Penrose (1970年)によって, 4次元Kerrブラックホール時空の対称性として発見された. また, CKYテンソルを純粋に数学的視点から導入したのは柏田(1968年)立花(1969年)たちによる幾何学者の研究にまで遡る. 20世紀後半になって, 超弦理論や超重力理論等々の重力を含む統一理論の関心は高次元ブラックホール時空を研究する大きな動機付けを与えた. 私たちは, このような流れの中でCKY対称性が高次元時空にも拡張できることを明らかにしてきた.
近年のゲージ理論の解析に重要な役割を果たしているのは,AdS/CFT対応と呼ばれる双対性である. 現在の大きな課題の一つとして, この対応をいかに対称性の低いゲージ理論に適用できるかという問題がある. 佐々木多様体は, 超対称性の低い場合の双対性を記述する超重力理論のソリトン解を記述すると考えられている.拡張されたCKY対称性を使って新しいタイプの佐々木多様体を提案し,その幾何学的な性質を明らかにした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CKY対称性に物質場による変形の効果を導入することで, より広いクラスのブラックホール時空が捕えられるようになった. 特に超重力理論の場合, このような変形は「トーション」として自然な幾何学的解釈が与えられる. 本研究では, トーションで拡張されたCKY対称性を許す時空の分類を行った. 分類リストには, 超重力理論のブラックホール時空やソリトン解を記述する佐々木多様体, 弱いケーラー多様体, 弱いG2多様体も含まれる. このような超重力理論の厳密解に, 拡張されたCKY対称性が存在することを見つけたことは本研究の大きな進展である. 最近 arXiv:1402.6904 で発表した論文「General Wahlquist Metrics in All Dimensions」では, 回転する完全流体の時空にもCKY対称性が存在することを明らかにした. また, この対称性を使って高次元時空に住む完全流体の厳密解が組織的に構成された. これらの解はAdS/CFT対応との関連性も期待できる. 以上のようにCKY対称性を持つ時空の研究は順調に進展している.

今後の研究の推進方策

CKY時空の完全な分類リストを作成することを主要な目標とする.
階数2のclosed条件を満たすCKY時空に関しては「Kerr-NUT-AdS時空が唯一の時空である」という簡潔で美しい結果をすでに得ている. 階数の高い場合, closed条件を課さない一般の場合, そしてトーションを含むCKY時空の分類はまだ未完成である. 現在, CKYの次元公式の研究を進めている. 時空に存在する独立なCKYの個数は, 時空の対称性を強く反映するものであり, その評価は基本的な問題である. CKYの次元の上限に関しSemmelmann[Math. Z. 243 (2003)]の先行研究がある. 我々は, Killing接続の曲率形式を使って, より強い条件が得られることを期待している. 実際, Kerr時空やブラックリング時空等々, 具体的な時空に対し, CKYの次元が再導出できることを確認している. もう一つの方向性として arXiv: 1402.6904で発見した高次元Wahlquist解の幾何学的な特徴付けを行う予定である. 4次元Wahlquist解に対しては, 「Simonテンソルが消える完全流体の最も一般的な解である」という特徴づけ知られている. 時空の分類リストを作るためにも、高次元解に対する幾何学的な理解を深めることは重要な問題であると考える.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A Deformation of Sasakian Structure in the Presence of Torsion and Supergravity Solutions2013

    • 著者名/発表者名
      T. Houri, H. Takeuchi and Y. Yasui
    • 雑誌名

      Classical and Quantum Gravity

      巻: 30 ページ: 135008 31pages

    • 査読あり
  • [学会発表] CKY対称性と佐々木構造の変形

    • 著者名/発表者名
      安井幸則
    • 学会等名
      微分幾何セミナー
    • 発表場所
      大阪市立大学数学研究所
    • 招待講演
  • [学会発表] 共形キリング-矢野対称性と超重力理論への応用

    • 著者名/発表者名
      安井幸則
    • 学会等名
      セミナー
    • 発表場所
      立教大学数理物理学研究センター
    • 招待講演
  • [学会発表] Conformal Killing-Yanoテンソルの次元公式

    • 著者名/発表者名
      安井幸則, 宝利剛
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      高知大学
  • [学会発表] 2階のキリング・矢野テンソル場をもつ5次元カルツァ・クラインブラックホールとその高次元への一般化について

    • 著者名/発表者名
      宝利剛, 山本慧, 安井幸則
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      高知大学
  • [学会発表] 例外群E8に基づく素粒子の統一模型

    • 著者名/発表者名
      廣岡隆孝, 安井幸則, 樋ノ上和貴, 溝口俊哉
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      高知大学
  • [学会発表] CKYと時空の隠れた対称性

    • 著者名/発表者名
      安井幸則
    • 学会等名
      セミナー
    • 発表場所
      茨城県つぶば市高エネルギー加速研究機構
    • 招待講演
  • [学会発表] 例外群E8に基づく素粒子の統一模型

    • 著者名/発表者名
      安井幸則
    • 学会等名
      セミナー
    • 発表場所
      茨城県つくば市高エネルギー加速研究機構
    • 招待講演
  • [学会発表] 例外群E8に基づく素粒子の超対称非線形模型

    • 著者名/発表者名
      安井幸則
    • 学会等名
      特異点研究会「特異点と時空および関連する物理」
    • 発表場所
      茨城大学
  • [学会発表] Heterotic SUSY domain wall

    • 著者名/発表者名
      樋ノ上和貴, 廣岡隆孝, 安井幸則, 溝口俊哉
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      東海大学
  • [学会発表] General Wahlquist Metrics in All Dimensions

    • 著者名/発表者名
      宝利剛, 樋ノ上和貴, C. Rugina, 安井幸則
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      東海大学
  • [図書] 数理科学 「幾何学における様々な発想」2014

    • 著者名/発表者名
      安井幸則
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      サイエンス社

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公開日: 2015-05-28  

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