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2011 年度 実施状況報告書

K中間子凝縮ーハイペロン共存に基づく新しい高密度核物質相の探究

研究課題

研究課題/領域番号 23540318
研究機関千葉工業大学

研究代表者

武藤 巧  千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (60212247)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード高密度核物質 / K中間子凝縮 / ハイパー核 / K中間子原子核 / K中間子-バリオン相互作用
研究概要

通常の原子核中に 複数個の K-中間子が束縛された K-中間子多重束縛原子核 (Multi-AntiKaonic Nuclei, MKN) を対象に, K-中間子とΛ, Σ-, Ξ-ハイペロンとがMKN中に共存する可能性を, 相対論的平均場理論 (RMF) を用いて非一様密度効果など,原子核の有限性を現実的に取り入れた枠組みの下で検討した。 予備的な結果として, 原子核の有限性のために媒質効果の効き方が小さく,K- 中間子の基底状態エネルギーが充分に下がらないため, K-中間子が担っていたストレンジネスがすべて核子に吸収され, ハイペロンに遷移することを示した。その結果, 原子核の基底状態は多重ハイパー核となり, 核子及びハイペロンの分布はパウリ原理のために核内でほぼ一様に なり, バリオン数密度も通常の核密度と同じ程度に留まることを示した。この結果は, 中性子星内部の無限系では,K凝縮とハイペロン物質との共存により,高密度でエネルギーの低い安定な状態ができる可能性がある事と対照的である。有限系でのマルチストレンジネスをもつハドロン多体系に関して, その存在形態の多様性を示唆している点は, J-PARC 等で計画されているストレンジネス核物理で目指している, K中間子原子核, ハイパー核の探索実験とも関連して重要である。  今後の課題は, 異なる非弾性過程間の結合効果を取り入れ, MKN の崩壊, 安定性に及ぼす効果をより現実的に検討することである。現時点での研究成果は, 物理学会, 国際ワークショップ等で発表した。最終的な結果を論文にまとめるために, 理論模型に含まれるパラメータの不定性を考慮し, 様々な原子核を対象に系統的に計算を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

H23年度の実施計画は, 当初中性子星内部の高密度核物質中での K中間子凝縮とハイペロン物質との共存に基づく状態方程式(Equation of State, EOS) の軟化に関係するものだった。しかし, 最近大きな質量をもつ中性子星の存在が観測により示唆され, 高密度領域での核物質のEOS に関する再検討の必要性が求められている。特に, K中間子凝縮とハイペロン物質の共存状態によるEOS の著しい軟化が中性子星の最大質量の観測と矛盾しないように, 非常に高い密度領域でEOS を堅くする効果を検討する必要がある。この問題はこれから新たに取り組むべき研究課題として位置づけられるが, それを遂行するための予備的研究の準備が必要である。 一方, 当初 H24年度に実施予定だった有限核での K中間子とハイペロンの共存の可能性については, 元々共同研究の一環としてすぐに実施できる状況であった。そのため, 研究計画の順序をはじめの計画から多少入れ替え, H23年度は先にこの課題から研究を開始した。とはいえ, 計算プログラムの修正等,計画実施に必要な予備的準備期間を要したために, 結果的に所期の研究計画よりも遅れることになった。

今後の研究の推進方策

「現在までの達成度」の (理由) でも述べたように,当初の研究計画の順序を多少入れ替え, H24年度に実施予定だった有限核での K中間子とハイペロンの共存の可能性についての研究を, H23年度の実績を基にまとめる方向でH24年度も継続させると同時に, 中性子星内部の高密度核物質中での K中間子凝縮とハイペロン物質との共存に基づく状態方程式(EOS)と自己束縛状態の可能性, 及びその安定性に関する研究課題をH24年度中に遂行する。その際, 中性子星の最大質量の観測との関連で, 非常に高い密度領域でEOS を堅くする効果として, バリオン間相互作用を媒介する K中間子自体も凝縮している可能性を考慮し, それによって高密度でバリオン間相互作用の斥力効果が強められる可能性を, 新たな検討課題として設定する。

次年度の研究費の使用計画

研究課題そのものの大きな変更はないので, 当初の研究費予算のままで研究を遂行する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Multi-antikaonic nuclei and in-medium kaon properties in dense matter2011

    • 著者名/発表者名
      T. Muto, T. Maruyama, T. Tatsumi
    • 雑誌名

      Journal of Physics : Conference Series 312

      ページ: 022018-1-6

    • DOI

      10.1088/1742-6596/312/2/022018

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of Λ(1405) on structure of multi-antikaonic nuclei2011

    • 著者名/発表者名
      T. Muto, T. Maruyama, T. Tatsumi
    • 雑誌名

      AIP Conference Proceedings

      巻: 1374 ページ: 197-200

    • DOI

      10.1063/1.3647124

  • [学会発表] Possibility of multi-antikaonic nuclei with hyperon-mixing2012

    • 著者名/発表者名
      T. Muto, T. Maruyama, T. Tatsumi
    • 学会等名
      Workshop on Future Prospects of Hadron Physics at J-PARC and Large Scale Computational Physics
    • 発表場所
      茨城量子ビーム研究センター (茨城県)
    • 年月日
      2012年2月9日
  • [学会発表] 多重K中間子束縛原子核の可能性とハイペロン混在2012

    • 著者名/発表者名
      武藤 巧, 丸山 敏毅, 巽 敏隆
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス (兵庫県)
    • 年月日
      2012年3月25日
  • [学会発表] K中間子束縛原子核におけるハイペロン混在の効果 II2011

    • 著者名/発表者名
      武藤 巧, 丸山 敏毅, 巽 敏隆
    • 学会等名
      日本物理学会 2011年秋季大会
    • 発表場所
      弘前大学文京町キャンパス (青森県)
    • 年月日
      2011年9月18日
  • [学会発表] 高密度星とストレンジネス核物理2011

    • 著者名/発表者名
      武藤 巧
    • 学会等名
      計算機物理学特別講義I(招待講演)
    • 発表場所
      千葉大学大学院理学研究科 (千葉県)
    • 年月日
      2011年6月16, 17日
  • [学会発表] Antikaonic nuclear bound states with hyperons2011

    • 著者名/発表者名
      T. Muto
    • 学会等名
      YIPQS & WCU joint international molecule-type workshop on dense strange nuclei and compressed baryonic matter(招待講演)
    • 発表場所
      京都大学基礎物理学研究所 (京都府)
    • 年月日
      2011年4月21日

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公開日: 2013-07-10  

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