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2011 年度 実施状況報告書

格子QCDを用いたHダイバリオンの存在を探る研究

研究課題

研究課題/領域番号 23540321
研究機関日本大学

研究代表者

井上 貴史  日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80407353)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードHダイバリオン / 格子QCD / エキゾチックハドロン / ハイペロン相互作用 / バリオン間相互作用 / ストレンジネス
研究概要

本研究は、格子QCDの数値計算によって、Hダイバリオンの存在を探る研究である。本年度は、クォーク質量が縮退したフレーバー対称極限と呼ばれる世界において、Hダイバリオンが存在するか否かを調べた。その結果、クォーク質量のある領域で、安定なHダイバリオンが存在する確証を得た。この成果は、バリオンとメソン以外にハドロンが存在する事を世界で初めて実証した快挙であり、また、Jaffe 博士による有効模型での予想を34年目にして確認した記念碑となるものである。この成果を公表した論文は、物理の世界で最も権威のある Physical Review Letters 誌に掲載され、さらにその巻のハイライト論文に選ばれた。また、格子QCD業界で最大の国際会議 XXIX International Symposium on Lattice Field Theory (Lattice 2011)や、素粒子原子核業界で最大の国際会議 19th Particles & Nuclei International Conference (PANIC 2011)を含め、国内外の会議においてこの成果について講演し、高い評価を受けた。本成果を受けて J-PARC 等の実験施設でHダイバリオン探索実験が提案される等、物理学界に大きな影響を与えている。なお、数値計算に用いたスーパーコンピュータの利用料、会議参加の為の旅費等は、当助成金によって支払われた。当助成金がなければ、本研究はなし得なかったと言える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、格子QCDの数値計算によって、Hダイバリオンの存在を探る研究である。従来、格子QCDにおいて束縛状態を判別するには、格子の体積を変えて計算を繰り返す事が必要だとされて来た。当助成金を申請する段階では、私もその繰り返しを考慮して研究計画を立てた。しかし申請後、私を含む共同研究グループによって、1つの体積で束縛状態を判定する画期的な方法が考案された。その方法が成功した為、予定よりも早く、業績の項目に記載した成果を上げる事ができた。実際、予定したよりも広いクォーク質量の範囲で、既に数値計算が完了している。

今後の研究の推進方策

本研究は、格子QCDの数値計算によってHダイバリオンの存在を探る研究であるが、業績の項目に記載した様に、既に、フレーバー対称世界のクォーク質量のある領域で、安定なHダイバリオンが存在する事を明かにした。今後は、クォーク質量の領域を広げて調べることにより、Hダイバリオンが存在する領域と、その束縛エネルギーのクォーク質量依存性を明かにしたい。また、高密度バリオン物質の状態方程式に対して、Hダイバリオが与える影響についても調べたい。これらの研究の推進にあたって特に困難は見当たらない。特段の方策は必要ないと考えている。しかし、場合によっては、高密度バリオン物質の状態方程式に関して、専門家の協力をいただく事があるかもしれない。

次年度の研究費の使用計画

次年度は、クォーク質量の小さいフレーバー対称世界、すなわちカイラル極限において、Hダイバリオンの存在とその束縛エネルギーを調べたい。その数値計算に用いる為、筑波大学のスーパーコンピュータシステムである T2K-Tsukuba の一般共同利用を申請する。その1ヵ月の利用料として、34万円を当助成金で支払う予定である。また、6月にオーストラリアで開催される格子QCD業界で最大の国際会議 International Symposium on Lattice Field Theory に参加し、研究成果の公表とライバルグループの進展状況の調査をしたいと考えている。その参加費用に当助成金を使用する予定である。本年度は3割分の交付が遅れた為、予定していた解析用パソコンを購入する機会を逸してしまった。その為に、次年度使用金が発生している。次年度の早い時期に、解析用パソコンを購入したいと考えている。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Two-Baryon Potentials and H-Dibaryon from 3-flavor Lattice QCD Simulations2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Inoue, Sinya Aoki, Takumi Doi, Tetsuo Hatsuda, Yoichi Ikeda, Noriyoshi Ishii, Keiko Murano, Hidekatsu Nemura, Kenji Sasaki
    • 雑誌名

      Nulcear Physics

      巻: A881 ページ: 28-43

    • DOI

      10.1016/j.nuclphysa.2012.02.008

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bound H Dibaryon in Flavor SU(3) Limit of Lattice QCD2011

    • 著者名/発表者名
      Takashi Inoue, Noriyoshi Ishii, Sinya Aoki, Takumi Doi, Tetsuo Hatsuda, Yoichi Ikeda, Keiko Murano, Hidekatsu Nemura, Kenji Sasaki
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 106 ページ: 162002-1, 4

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.106.162002

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Extraction of hadron interactions above inelastic threshold in lattice QCD2011

    • 著者名/発表者名
      Sinya Aoki, Noriyoshi Ishii, Takumi Doi, Tetsuo Hatsuda, Yoichi Ikeda, Takashi Inoue, Keiko Murano, Hidekatsu Nemura, Kenji Sasaki
    • 雑誌名

      Proceedings of the Japan Academy, Series B

      巻: 87 ページ: 509, 517

    • DOI

      10.2183/pjab.87.509

    • 査読あり
  • [学会発表] H-dibaryon from Full QCD Lattice Simulations2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Inoue
    • 学会等名
      RIKEN, BNL Research Center Workshop, Hyperon-Hyperon Interactions and Search for Exotic Di-Hyperons in Nuclear Collisions(招待講演)
    • 発表場所
      Brookhaven National Laboratory
    • 年月日
      Feb 29, 2012
  • [学会発表] Bound H-dibaryon in the flavor SU(3) limit from a Full QCD Simulation on the Lattice2011

    • 著者名/発表者名
      Takashi Inoue
    • 学会等名
      19th Particles & Nuclei International Conference (PANIC 2011)
    • 発表場所
      Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA, USA
    • 年月日
      July 28, 2011
  • [学会発表] Bound H-dibaryon from Full QCD Simulation on the Lattice2011

    • 著者名/発表者名
      Takashi Inoue
    • 学会等名
      XXIX International Symposium on Lattice Field Theory (Lattice 2011)
    • 発表場所
      Squaw Valley, Lake Tahoe, California, USA
    • 年月日
      July 12, 2011
  • [学会発表] 格子QCDを用いたHダイバリオン質量の研究

    • 著者名/発表者名
      井上貴史
    • 学会等名
      日本物理学会 第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学
    • 年月日
      2012年3月25日
  • [学会発表] 格子QCDを用いたフレーバー対称世界におけるHダイバリオンの研究

    • 著者名/発表者名
      井上貴史
    • 学会等名
      日本物理学会2011年秋季大会
    • 発表場所
      弘前大学
    • 年月日
      2011年9月17日
  • [学会発表] ハイペロン相互作用とHダイバリオン

    • 著者名/発表者名
      井上貴史
    • 学会等名
      新学術領域「素核宇宙融合」x「新ハドロン」クロースオーバー研究会(招待講演)
    • 発表場所
      理化学研究所 計算科学研究機構(AICS) 神戸
    • 年月日
      2011年6月23日
  • [備考] http:/www.brs.nihon-u.ac.jp/~t-inoue/index.html

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公開日: 2013-07-10  

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