研究課題/領域番号 |
23540325
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
丸山 敏毅 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50354882)
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研究分担者 |
巽 敏隆 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40155099)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 超新星コア / 原始中性子星 / 有限温度 / 非一様構造 / 原子核物質 / ニュートリノ |
研究概要 |
超新星コアや原始中性子星に実現している有限温度での原子核物質の混合相の構造と性質を相対論的平均場および局所密度近似の枠組みで調べた。まず、低密度領域での液相-気相の混合相について、表面やクーロン力といった有限サイズ効果を排除し化学ポテンシャルと圧力に関する単純な平衡条件のもとで調べた。低密度(気相)の原子核物質の圧縮による相転移に関する考察を、圧力-陽子含有率平面上での軌跡と共存曲線との関係として理解を深めた。また、相転移のcongruence (成分比合同性)を、共存曲線の広がり具合としてとらえ、(陽子含有率が0.5である対称原子核物質はcongruenceが高く中性子過剰原子核物質はcongruenceが低い事、温度の上昇とともにcongruenceが高くなること、中性子過剰原子核物質でcongruenceが低いのは陽子中性子間の強い引力によることなどを明らかにした。 次に有限温度での低密度原子核物質の非一様構造「パスタ構造」を計算し、系の圧力と密度への依存性を求めた。これによって有限サイズ効果をすべて考慮したうえで液相-気相の混合相の状態方程式を求めることが可能となった。 次に、実際の超新星コアや原始中性子星に対応する、有限温度でニュートリノがトラップされた状況での非一様構造を計算するようプロフラムを改良した。レプトン(ニュートリノと電子)含有率が一定としてベータ平衡条件を課した場合、電子含有率すなわち陽子含有率が高くなり、ニュートリノトラップの影響がパスタ構造を安定化するように働くことが分かった。それに対して原始中性子星内部のハドロン-クォークの混合相についても有限温度・ニュートリノトラップの計算を行い、ニュートリノの存在が局所電荷密度を低くするよう働き、パスタ構造の出現を抑制することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度実施計画では、(1)計算コードの作成、(2)低密度原子核物質の構造と性質の研究、(3)Wigner-Seitz近似を用いない計算による研究、(4)高密度でのK中間子凝縮物質の構造と性質の研究、(5)更に高密度でのハドロン-クォーク混合相の構造と性質の研究を行う予定であった。はじめの2項目と5番目の項目については、「研究実績の概要」に書いたとおり成果があった。3番目のWigner-Seitz近似を用いない研究については十分な成果があったが、本件とは別の科研費により研究を進めているためここでの報告は省略した。4番目のK中間子凝縮物質については、有限温度ではないがWigner-Seitz近似を用いない研究において計算を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
低密度原子核物質の構造と性質に関して、超新星コアを想定した研究を進めるとともに、超新星爆発のシミュレーションに使える状態方程式のデータベース化についての方策を探る。また、原始中性子星の冷却過程の計算を外部の研究者と連絡を取りながら開始する。高密度におけるハドロン-クォーク混合相の研究で、クォーク相の取り扱いを現在使っているbagモデルよりも洗練されたモデルを適用する。温度依存性が運動エネルギーのみに影響するような枠組みを用いているが、相互作用部分にも温度依存性を入れる事を考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
プレゼン用のPCが老朽化した場合は買い替えるが、それ以外は主に旅費に用いる。特に、成果発表や研究交流の為に用いる。
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