研究課題/領域番号 |
23540325
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
丸山 敏毅 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50354882)
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研究分担者 |
巽 敏隆 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40155099)
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キーワード | 超新星コア / 原始中性子星 / 有限温度 / 平均場理論 / 原子核物質 / ニュートリノ |
研究概要 |
有限温度での原子核物質の混合相の構造と性質の研究として、24年度は中性子星の冷却機構の研究に取り組んだ。これまでの中性子星冷却に関する考え方は、小質量星に比べて大質量星ほど早く冷えるとされてきた。それは小質量星は核子だけから構成されているのに対し、大質量星では中心密度が高いためにクォーク物質ができており、核子のURCAより物質を早く冷やすクォーク冷却機構が働くためである。実際、中性子星質量と温度の観測値はこの傾向をよく表している。しかしカシオペア座Aでは、観測されている温度が高く通常の冷却機構では説明がつかない。そこで我々は天体内でのハドロンークォークの混合相とを考慮した。さらに、混合相中のクォークがある密度以上で超流動相、以下で通常クォーク相となると仮定した。超流動は、核子物質とクォーク物質の両方でURCAによる冷却を抑制する。また、カシオペア座Aの中性子星では内部の密度が高く、ハドロン-クォークの混合相のうち低密度クォーク相の領域が比較的狭く超流動の領域が広いため、クォーク超流動の寄与がかなり大きいことが数値計算の結果から得られた。その結果を元に天体の冷却過程を計算すると、観測値をかなりよく再現することができた。 低密度の原子核物質では昨年度得られた結果すなわちニュートリノの存在が陽子含有率を増加させ、それによって非一様構造の出現を促進するように働くことを温度やレプトン含有率といった条件を変えながら確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定に入れていた状態方程式のデータベース化についてはあまり進展していないが、物質の性質を調べることに重点を置くよう、方針を修正しつつある。 また、天体の冷却過程に関して外部の研究者の協力を得て論文の出版に漕ぎ着けた点で、ある程度の成果が出せた。
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今後の研究の推進方策 |
状態方程式のデータベース化には拘らず、原子核物質の性質を計算する手法をもっと進展させる方向で進めたい。 特に高密度でのハドロン-クォーク混合相の構造と性質については、天体の質量や半径に重要であり、最近見つかった太陽質量の2倍の天体を支えられる状態方程式が得られるようなクォークのモデルを探りたいと思っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に旅費として使う予定だが、データ保存のための大容量ディスクの購入を検討している。
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