研究課題/領域番号 |
23540327
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
郡 和範 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50565819)
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キーワード | 超対称性理論 / ビッグバン元素合成 / ヒッグス / リチウム |
研究概要 |
本年度は、超対称最小標準模型(MSSM)に1重項スカラーを入れて自然に拡張したモデルであるNMSSMにおけるスカラータウレプトンの宇宙論に果たす役割を明らかにした。その理論に現れる新粒子のうち、一番軽いものがニュートラリーノ(中性ゲージボゾンの超対称パートナー)で、次に軽いものがスカラータウレプトンであるような質量のスペクトルのセットアップは、比較的自然に実現されることが知られている。それらの間の質量差がとても小さい時、スカラータウレプトンの寿命がとても長くなることが知られている。そうした長寿命のスカラータウレプトンが宇宙初期に与える影響を詳しく調べた。 スカラータウレプトンのような長寿命の荷電粒子が存在すると、宇宙初期に原子核と束縛状態を作り、従来のビッグバン元素合成の原子核反応率に変更が生じ、合成される軽元素量を変えてしまう。我々の計算により、NMSSMによりヒッグス質量の125.5GeVを自然に実現するとともに、ビッグバン元素合成時のリチウム7の生成量が、観測と合うように修正されることを明快に示した。これは、リチウム7の観測量が理論予言よりも3σ以上のレベルで少ないというリチウム問題を、NMSSMを使って自然に解決するという、超対称性の存在に関してポジティブな示唆を与える一つの例になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように、成果が得られた反面、最終目標にしていたことがまだ達成されていない。達成度としては85% 程度である。長寿命荷電粒子の存在量に対しての上限値を、より幅広い寿命の関数としてプロットする図を作成することである。 やや遅れた理由は、単に共同研究のマネジメントの問題だけである。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更は必要ない。共同研究者との打ち合わせを頻繁に行い、進捗状況を確認し合う機会を増やす事ができれば、おのずと能率を上げる事ができると考えている。 この最終段階の作業は、佐賀大と東京大の共同研究者と1年以内に達成できる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本事業を完了させるために必要不可欠な研究打ち合わせのため、3月に沖縄科学技術大学院大学への出張を計画していたが、計算データが想定したより多くなったため、十分な打ち合わせの時間を、予想以上に長くとる取る必要がでてきた。その結果、先方の都合により、出張が年度以内に収まらなかったため、未使用額が生じた。 上記のため、次年度の沖縄科学技術大学院大学への出張の旅費として、科研費を使用したい。 出張旅費 180,000円(航空券+宿泊費+日当+公共交通機関が使えない場所への交通費他) 実費との差額が生じた場合は、消耗品費に使用する。
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